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公務員試験を受ける吾郎
従者トムーの知り合いらしい腕白建設の社長、勇者ワンダーから家を買うことにした吾郎。
「で、お前さんはこの伊達市で何をやるんだ?」
「何をとは?」
「お役人、商売。商売をやるなら、その商売によって紹介する物件は変わってくるぞ」
「あ、なるほど」
(お役人はやるつもりは無いからな。商売と言っても)
「みんなと相談してみます。少し待ってもらえますか?」
「いいぞ」
嫁たちと相談する吾郎。
「なあ、どんな商売をやる?」
「え?」
「え?」
「ゴロー様は将軍様になるんですよね?」
「そうなの?」
「だって、ゴロー様は弱き人を助ける為に全国を武者修行してたんですよね?」
(そう言えば、格好つけてそんな台詞を言った気がする)
「まあ、それが天により与えられた勇者としての使命だからね」
「キャー、格好いいです〜!」
「ゴロー様、ステキ!」
「もう、好きにして!」
(流れ的に、俺は将軍を目指すしかないのか?)
「社長さん、俺はお役人になるそうなので普通の家をお願いします」
「おいおい、上級国家公務員試験はかなりの難関だぞ。合格してから家は決めたほうが良いんじゃないのか?」
「そうなんですか?」
「俺なんか、何回も落ちて諦めて建設会社をやってるからな」
「上級じゃなくて下級は駄目なんですか?」
「勇者は上級しか受けれない」
「そうですか」
(まあ、勇者なのに下級公務員でこき使われるのはアレだもんな)
「上級国家公務員試験は来月だ」
「年に一度で?」
「そうだな」
(しかし、俺が上級国家公務員に合格したとして、嫁たちやトムーはどうするんだ?)
「トムー」
「はい」
「俺が上級国家公務員になったら、トムーは何をするんだ?」
「ゴロー様の従者ですけど」
「いや、だから、俺が上級国家公務員の仕事をやってる間」
「上級国家公務員は専属の部下として4人の従者を側に置けますので」
「そうなの?」
「はい」
(なるほど。国会議員の秘書みたいな感じかな)
「なら、俺が上級国家公務員試験に合格するまでは宿に泊まるか」
「分かりました」
「俺が試験に落ちたら、何か商売をやるからどんな商売が良いのか考えといてくれ」
「分かりました」
そうして、吾郎は上級国家公務員試験を受けることになった。
(賢者用のカツラを被って試験を受ければ余裕で合格だろ)
・・・・・
勇者は1000人に1人くらいの確率で産まれるらしい。伊達藩は人口100万人なので1000人くらいの勇者がいる計算だ。
(1000人に1人くらいが勇者って、かなりのインフレ勇者だよな。デカいプロレスラーみたいな人をたまに見るけど、あれはみんな勇者なのか)
上級国家公務員試験を受験できる年齢は40歳までらしいのだが、戸籍制度とかないので自己申告で良いらしい。
(俺は本当は43歳なんだけど、見た目は二十歳だから大丈夫だろ)
二十歳、勇者ゴローとして上級国家公務員試験に申し込んだ吾郎。
試験日になったので試験会場へと行った。受験する勇者は200人くらいで合格者は最大5名らしい。
(倍率40倍かよ。東京大学に合格するより難しいんじゃないのか)
試験を受ける勇者たちは、身長2メートル超えの筋肉ムキムキな奴ばかりだ。
(身長175センチの俺が子供みたいだな)
一次試験は重量上げだった。大きな金属の塊を30センチ以上、持ち上げれば合格らしい。
格闘技用のカツラを被ってトライした吾郎は余裕で持ち上げて一次試験は合格した。
(やはり、格闘技用のカツラを被ると怪力になるんだな)
二次試験は人型のダメージ測定器を1回だけ攻撃して、一定以上の数値を出せば合格らしい。
攻撃方法は格闘技、剣術、魔法の3つから1つ、どれで攻撃しても良いと言われた吾郎は、普通に正拳突きで合格した。
三次試験は筆記試験で、このときには勇者たちは30人に減っていた。
賢者用のカツラを被り筆記試験を受けた吾郎。スラスラと解答できる。
(流石は賢者用のカツラだな。分からない問題が無いぞ)
筆記試験が終了し、1時間後くらいに合格発表すると言われた吾郎は小説を読むことにした。
そして合格発表になり、吾郎は1番で合格したのだった。
上級国家公務員の証だと、ネックレスをもらった吾郎。
ネックレスについている石の色は緑で、出世するたびに色が変わるらしい。
最初は青色が基本色だか、試験で1番の勇者は緑色がもらえると説明された。
青、緑、赤、銀、金、虹の順で、藩主は金で将軍が虹色。
(虹色はプレミアか。色の順番がパチンコの保留みたいだな)
試験会場の外では嫁たちとトムーが待っていた。
「ゴロー様、おめでとうございます」
「「「おめでとうございます」」」
「合格したって分かるの?」
「そのネックレスで」
「あ、なるほど」
「初めての受験で合格とは、流石はゴロー様です」
「そうだよな。倍率40倍とは思わなかったぞ」
「勇者の夢は将軍ですからね。上級国家公務員にならないと絶対に将軍には成れないので」
「将軍か。あと4階級だな」
「ゴロー様なら毎年昇級して将軍選抜大会の時期さえ合えば5年後には将軍様ですよ」
「いや、俺だけの力では将軍は無理だろ」
(準々決勝からは従者4人と一緒の団体戦だからな)
「ゴロー様が強くなればなるほど、従者もレベルアップしますから」
「そうなの?」
「そうなんです」
(俺だけが頑張るのか?)
「トムーたちは何もしなくてもレベルアップするってか?」
「あ、いえ、ゴロー様と一緒に戦闘訓練とかやりますけど」
「俺は上級国家公務員の仕事で忙しくなるだろ」
「あの、上級国家公務員の仕事は戦闘訓練とかです」
「は?」
「将軍になって国家予算の半分をもらうのが上級国家公務員の最大の目的なので」
「将軍になると、伊達藩は国家予算の半分をもらえるのか?」
「そうです」
(……上級国家公務員は、まさに体を張って国民の為に働くんだな。この場合は藩民の為だけど)
毛無山吾郎は異世界で将軍になれるのか。それは、まだ分からない。
【 終わり 】
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