服一式をプレゼントする意味

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服一式をプレゼントする意味

(土下座をされたのは初めてだな。このおっさん、俺を疑ったことを謝ってるのか?) 「怒ってないので土下座はやめてください」 「本当に?」 「はい」 「斬り捨て御免とか?」 「しませんよ」 「ありがとうございます!」 「いえ」 (こんなおっさん、斬ってどうするんだ?) 立ち上がるおっさん。 「勇者様。俺を、いえ、私を従者にしてください」 頭を下げるおっさん。 「え?」 「本来なら、勇者様に斬り捨て御免されていたはず。これからの人生は勇者様の為に使います」 「えっと……自分の人生だから好きにすれば良いと思うけど」 「ありがとうございます!」 「いや、別に」 (面倒そうだから、適当なところで逃げたらいいか) 「トムーおじさんだけズルいよ!」 「そうだよ!」 「勇者様、私達も従者にしてください!」 「え?」 「私達も金熊に殺されていました。これからの人生は勇者様の為に使います」 「使います」 「私も」 「えっと……自分の人生だから好きにすれば良いと思うけど」 「「「ありがとうございます」」」 頭を下げる三姉妹。 (こっちも面倒そうだから、適当なところで逃げよう) 「勇者様、カバンをお持ちします」と、おっさん。 「いや、これくらい持てるよ」 「勇者様、私に死ねと?」 「いや、そんな事は言ってないけど」 「カバンも持てないようなら死ぬしかありません」 (うわー。面倒だな) 「じゃあ、持ってくれる?」 「喜んで!」 目をキラキラさせてカバンを持つおっさん。 「死んでもこのカバンは守ります」 「いや、そこまでしなくても」 「守らせてください!」 「まあ、うん」 「ありがとうございます」 (本当に面倒だぞ、これは) 「勇者様」 「ん?」 「私達にも、勇者様の従者としての何かを持たせてください」 「持たせてください」 「ください」 三姉妹が目をキラキラさせている。 「あ、うん」 (何を持たせれば良いんだ? 若い女性だから護身用の物が良いのかな?) しばし考える吾郎。 (三姉妹だから……ここは、くノ一(くのいち)三姉妹かな。完全防御のくノ一スーツとくノ一武器セットで良いか) 「カバンを」 「ははっ」 吾郎にさっとカバンを渡すおっさん。 吾郎はカバンを開いて「完全防御のくノ一(くのいち)スーツを一式と、くノ一武器セット。ピンク、黄色、白でお願いします」とカバンにお願いした。 それらをカバンから取り出す吾郎。 「ピンクと黄色と白。好きなのを選んで」 「勇者様、それは服ですか?」 「うん。服一式と武器だね」 「「「私達で良いんですか?」」」 「え? 良いけど」 「「「ありがとうございます!」」」 「うん」 「ゴロー様が選んでください」 「私達のイメージで」 「お願いします」 「えっと……」 (イメージと言われても、君たちは一卵性の三つ子だよね? 適当でいいか。エミー、アミー、ユミーだったよね) 「エミー、ピンクで」 「ありがとうございます」 「アミーは黄色」 「ありがとうございます」 「ユミーは白ね」 「ありがとうございます」 「勇者様、カバンを」 「あ、うん」 おっさんにカバンを渡す吾郎。 「トムーさんでしたっけ?」 「トムーとお呼びください」 「あ、うん」 (まあ、俺よりも年下みたいだし。年下だよな?) 「トムーは何歳?」 「41歳です」 (良かった。俺より2つ年下だ) 「嫁や子供は?」 「いませんけど」 「ずっと独身?」 「そうです」 「えっと……もしかして、男が好き?」 「いえ、自分の筋肉が好きで、自分の筋肉以外にはあまり興味はありません」 「なるほど」 (確かに、見た目はプロレスラーかボディービルダーだもんな) 「ゴロー様、着替えたいので、早く家に帰りたいです」 「あ、うん」 三姉妹についていく吾郎。その後をトムーもついてくる。 「ゴロー様、ここです」 三姉妹たちの家は普通の田舎の木造住宅だった。 「おかえり。あれ? その人は?」 「お母さん、山で助けてくれた勇者ゴロー様だよ」 「勇者ゴロー様?」 「うん。私達を3人とも嫁にしてくれるって」 「あら」 「はい? え?」 驚く吾郎。 「ほら、こんな花嫁衣装をくれたんだよ」 「まあ、綺麗な色ね」 「うん」 (……もしかして、この世界では独身の男が独身女性に服一式をプレゼントしたらプロポーズの意味なのか?) 「勇者ゴロー様、ふつつかな娘たちですが末永くお願いいたします」 「あ、えっと……はい」 (これ、どうするの?) 「それで、勇者様」 「え?」 「お忘れとは思いませんが」 「何をです?」 「その……結納金は」 「あ、そうでした」 (そうだよな。嫁をもらうときは結納金だよな。芝居でやった事があるぞ。確か、100万円だったか? 三姉妹だから……あれ? 3人と結婚して良いの? 勇者はできるのか? 話の流れ的に合法みたいだよな) 3人だから結納金は300万円? いや、ここは1000万円? しかし、俺は勇者らしいから1人1億円くらいは。とか考える吾郎。 「トムー、カバン」 「ははっ」 「3億円お願いします」 カバンを開いて3億円をお願いする吾郎。 (通貨は円なのか? 日本円との相場が分からんけど) カバンからは大きな金貨が出てきた。 「あっ、それって100万円金貨?」 「凄いね」 「持ったことも無いよ」 (これって100万円金貨なのか。だとすると、300枚だな) 金貨を並べる吾郎。 「結納金3億円です」 三姉妹の母親はガクブルしている。 (あれ? 安くて怒ってる?) 「あ、ありがとうございます、勇者ゴロー様!」 深々と頭を下げる三姉妹の母親。 (良かった。相場よりは多かったみたいだ)少し安心した吾郎。 「夫の稼ぎの100年分もありがとうございます」 「あ、いえ」 (だとすると、夫の年収は300万円? 田舎の人ならそれくらいなのかな? 日本とそんなに違わないのか) 「ゴロー様、ありがとうございました」 「1人1000万円とかならガッカリしてました」 「私、1人3000万円くらいかと思ってました」 「あ、うん。まあ、1人1億くらいが勇者なら常識だよね」 (あぶねー。3人で1000万円にしなくて助かった)
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