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震えていて。なぎはらっているあいだ動けなくて。「大丈夫ですか?」そう聞かれても。
「はい」とも言えなくて。なにも出来なかった。声もしぐさもできなくて。
「とりあえず町まで送っていきます」と勇者はお姫様抱っこで私を持ち上げて。心臓が一瞬ドキンと音をたてたのは覚えている。そのまますぐに走っていって。ものの二分もかからずに隣町にたどり着いて。
「俺はもう行きますね」と勇者は言えば即座に別の町へと歩き出す。それを引き留めることも、お礼を言うことも出来なかった。ありがとうございますと言えれば良かったのに。喉から声がでなかった。寸前で止まってしまって。
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