助けてもらったあの方は

3/6
前へ
/6ページ
次へ
震えていて。なぎはらっているあいだ動けなくて。「大丈夫ですか?」そう聞かれても。 「はい」とも言えなくて。なにも出来なかった。声もしぐさもできなくて。 「とりあえず町まで送っていきます」と勇者はお姫様抱っこで私を持ち上げて。心臓が一瞬ドキンと音をたてたのは覚えている。そのまますぐに走っていって。ものの二分もかからずに隣町にたどり着いて。 「俺はもう行きますね」と勇者は言えば即座に別の町へと歩き出す。それを引き留めることも、お礼を言うことも出来なかった。ありがとうございますと言えれば良かったのに。喉から声がでなかった。寸前で止まってしまって。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加