意味のない問いかけのはずが

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「あなたはどこにいますか?」意味のない問いかけ。何度言った?現実逃避。いつもの交通道路。なにも変わらない世界。誰かがいなくても永遠に回り続ける地球。人々の記憶は薄れていく。 僕にとっては残酷きわまりない。大事な人が亡くなっても廻り続ける。もう半年と少しが過ぎている。ここで彼女を亡くしてから。しかしなにも変わらない。そう。変わらない。はじめの5日くらいは、捜査で警察が慌ただしく動いた。その二週間後後くらいまでは、花々が道の端に添えられて。彼女の好きだった、マーガレットもあった。 交通事故で、酔っ払った大人運転するのトラック。僕より後ろを歩いていた僕の彼女。急にトラックが横にそれて。彼女にぶつかり。血がふき。道に血がこぼれ落ちて。大丈夫か? と聞こうと近づければ、顔がつぶれて、彼女の血が大量についた制服が目にはいって。生きていない。そう直感でわかってしまう。そのくらい無惨な姿。信じたくない。信じたくない。信じたくない。何度呟いた? わからないそのくらいの無惨な姿。 その近くを歩いていたおばさんが警察を呼んで。僕は見ていることしかできなくて。 でも薄れていく。薄れていく。花は少なくなっていく。僕と同じ中学校の生徒の笑い声 「ねぇー桃子は勇のことがー?」みたいな恋話。「おい!てめーら!明日は俺んち集合な!」なという遊び約束。 そうまるで彼女のことなんて忘れているように感じられる。帰り道何度声をかけても変わらない。彼女の死。「おいおい いい加減現実みろよー!悔やんだってかわんねーぞ」と僕に声かけるクラスメート。やめろやめろ。そんなことは僕が一番わかってる。彼女の声。今も聞こえる気がする。歩いていると不思議とトラックが見える日もある。無いはずのトラック。「たくっつまんねーの」とか行って立ち去っていく。彼女の死がつまんないと言ってるように聞こえて辛い。 その場で立ち止まって一時間くらい過ぎた。ほとんど誰もいない。部活帰りは、まだ速く、居残りはあまりいないからだ。 また僕は呟く「あなたは何処にいますか?」と。意味がないことくらい知っている。何度したって帰ってくるのはせいぜい冷やかしだったからだ。 ふと空を見上げる。なぜかはわからない。無意識。天使の階段そう言われることもある。金色の光線が空に見える。何かが降りてくる。天使の輪と天使の羽。迎えに来たと言われたら信じてしまう。でも一番驚いたのが僕の彼女だったから。天使の輪と羽は付いてないはずだけど。「ここにいます!ずっと聞こえてました! どうしてもこれなかった……それにこの天使の階段が消える頃には。もういませんが。」無理してこらえていたであろう顔も赤くなり、涙でおおわれる。「うわーん! 会いかったです」僕にも涙かつく。つられて僕も泣いてしまう。声がでない。「それに今回以降はもうこれません。会えないんです……うわーん」僕はさらに辛くなる涙が止まらない。大粒の涙が大量に出る。「そんなずっと一緒にいられるんじゃないのか?」信じたくない。せっかく会えたのに。死んでもう会えないはずの彼女に。なのに。それ以降会えないって……どういうことだよ。「あれから何があったかきかせてよ最後の思出話。」それから僕と彼女は初めてあった日。桜の木の下「つきあってください!」と告白した日のこと。一瞬一瞬が映像になっていく。話していくうちにどんどん。 つきあってください!のときは小学生六年の卒業式。制服姿の僕と。袴姿な彼女だった。その袴は、梅柄。さらに話した初デートの遊園地。観覧車の光景。それは夕暮れ時二人きり。さらにはメリーゴーランドにのって。二人でポップコーン分けあって。写真と大量に撮りまくって。はしゃぎまくって。さらには体育祭でお弁当作ってもらって。そのお弁当に大好きな唐揚げが入ってて。すごく美味しくて。そのままアンカーでリレーで一位を取ったこと。プールでばしゃばしゃ水を掛け合い。浴衣で夏祭り。わたあめを買って一緒に食べて。走ってはぐれかけて手を繋いで。「これからも一緒だよ!」って花火を見た。どんどん話せば話すほど止まらない。 しかし、あの天使の階段は薄れていく。彼女の体も。「そろそろみたいです。すごく楽しかった。もう泣かないでください。」そう言い残すと彼女の体は薄れていった。まるで天使の階段を上るみたいに。登りきって消えていく。僕はただ呆然と空を見上げるしかなかった。 それ以降僕は、呟くことはしなくなった。あなたはどこにいますか?と。
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