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建物の明かりを反射しところどころ光る黒い水面を見つめていた。
微かに聞こえるせせらぎ。
いったい貴女はどこでなにしている?
何時でもどこで何していても貴女の気配を…姿を探してしまう。
こんなところにいるわけ無いのに、どこかにいるんじゃないかと無意識に。
人を忘れる順番は
聴覚・視覚・触覚・味覚・嗅覚
と言われている。
いつか忘れてしまうのだろうかと恐怖を感じ、忘れたくなくて記憶を呼び起こす。
俺の名を呼ぶやや甘目の声音。
白い肌に色素の薄い虹彩。
ぽってりとした紅い唇。
くるくると目まぐるしく変わる表情。
柔らかく吸い付くような肌
すぐに毛玉が出来てしまいそうな細い猫毛。
Kissの味
彼女が好んでつけていた優しい花の香り。
大丈夫だ。
まだ覚えている。
いや、違う。
いつまでも忘れることなどできやしないのだ。
あの指輪に刻んだメッセージ通り
どれ程季節が廻っても…
【俺の心はあなたのもの】
永遠に変わらない。
そう。
いつか再会が叶うならば…
決して離しはしない。
End
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