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 到着したのは、カウンター席しかない小さなバーだった。並んでお酒を飲みながら、小さな声で話をした。居酒屋と違った雰囲気と声量のせいか、お笑いの話には戻らず、お互いの子供のころの話や、休日の過ごし方を話した。  時々触れ合っていた肩が、段々と触れたままになり、いつの間にかぴったりと寄り添うように座っていた。東堂さんがクスリと笑うと、その声が耳に直接入ってくるようで、今、自分が東堂さんを独り占めしていることを実感した。  このままずっと、東堂さんの隣にいたいな。  そんなことを考えて、肩に頭を預けそうになるけれど、やっぱり勇気が出なくて、また元の位置に戻して苦笑する。 「眠い?」 東堂さんが覗き込むように私を見て聞いてくる。 「いえ。楽しいです。」 照れながら答えると、 「俺も楽しいよ。」 と頭を撫でてくれた。
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