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4.
金曜日。定例鑑賞会第1夜となる日。
定時を過ぎると、土屋さんが私の席にやってきた。
「もう出られますか?」
「あ、ごめん、あと30分くらいかかりそう。」
「ん。じゃ、待ってる。柘植さん、もう退勤しましたよね?」
私の隣の席を指さして聞いてくる。
「うん。」
頷くと、柘植さんの席に座ってスマホをいじりだす。
しばらく仕事をしていると、カシャ、と音がする。見ると、土屋さんがこちらにスマホのカメラを向けていた。
「なんで?」
「別に。暇だから。」
「削除してね。」
「なんで?」
「え?逆になんで?」
「なんで?がなんで?だな。」
面倒になり、パソコンに向き直ると
「今日、帰る前にDVD買いに行っていい?」
と聞かれる。
「うん。いいよ。」
「リスト見てたら欲しくなってきちゃって。」
「ああ、分かる。手元に並べたいよね。」
「そうそう。動画レンタルする回数考えると、買った方が安いのもあるし。」
「あー、そうなんだよね。レンタルしなくなった時の嘆きも大きいし。」
「そうそう!あれはマジで落ち込むっ!」
スマホを持ったまま、私を指さして大きな声で言うから笑ってしまう。
「しまった。大声だしちゃった。テンション上げさせないでよ、伴内さん。」
「自分で大声出したんでしょ。」
「俺のイメージが崩れる。」
「崩れて困るようなイメージを掲げてらっしゃるの?」
「イケメン、クール、ふとした瞬間に見せる優しさが堪らない。」
「あはは、知らんかった。」
「勉強不足ですね、伴内さん。」
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