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 金曜日。定例鑑賞会第1夜となる日。  定時を過ぎると、土屋さんが私の席にやってきた。 「もう出られますか?」 「あ、ごめん、あと30分くらいかかりそう。」 「ん。じゃ、待ってる。柘植(つげ)さん、もう退勤しましたよね?」 私の隣の席を指さして聞いてくる。 「うん。」 頷くと、柘植さんの席に座ってスマホをいじりだす。  しばらく仕事をしていると、カシャ、と音がする。見ると、土屋さんがこちらにスマホのカメラを向けていた。 「なんで?」 「別に。暇だから。」 「削除してね。」 「なんで?」 「え?逆になんで?」 「なんで?がなんで?だな。」 面倒になり、パソコンに向き直ると 「今日、帰る前にDVD買いに行っていい?」 と聞かれる。 「うん。いいよ。」 「リスト見てたら欲しくなってきちゃって。」 「ああ、分かる。手元に並べたいよね。」 「そうそう。動画レンタルする回数考えると、買った方が安いのもあるし。」 「あー、そうなんだよね。レンタルしなくなった時の嘆きも大きいし。」 「そうそう!あれはマジで落ち込むっ!」 スマホを持ったまま、私を指さして大きな声で言うから笑ってしまう。 「しまった。大声だしちゃった。テンション上げさせないでよ、伴内さん。」 「自分で大声出したんでしょ。」 「俺のイメージが崩れる。」 「崩れて困るようなイメージを掲げてらっしゃるの?」 「イケメン、クール、ふとした瞬間に見せる優しさが堪らない。」 「あはは、知らんかった。」 「勉強不足ですね、伴内さん。」
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