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「お待たせしました。」
「ごめんね。定時過ぎに。」
「いえ、大丈夫です。」
「土屋さんは、伴内さんが仕事終わるの待ってるの?」
「はい。でも大丈夫です。」
東堂さんが苦みを含んだ笑みを見せる。
「そっか。」
呟くように言われて、慌てて
「あの、本当に鑑賞会するだけですから。」
と言うと、
「そう。」
と無表情に言われる。パソコンに向き直る東堂さんを見て、苦笑する。
私、なにを焦ってるんだろう・・・東堂さんは、私と土屋さんが何してようと気にしてないよ。
「ここの数値なんだけど、前に伴内さんが組んでた自動集計のスクリプト、使わせてもらえないかなって思ってて。」
「ええっと、ちょっとお借りしていいですか?」
東堂さんのマウスを借りて、画面を覗き込む。
「あ、そうですね。この計算なら、あのスクリプト使えると思いますよ。東堂さん、このフォルダのアクセス権お持ちでしたっけ?」
スクリプトの記述を格納してあるフォルダにポインタを充てて東堂さんを見ると、東堂さんが画面ではなく私を見ていて、心臓が飛び跳ねそうになる。口角が下がり、少しだけ眉が寄っていて、切ないような、悲しいような表情をしているから、思わず見入ってしまう。
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