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「さっきまでは自覚なかったんだけど、まだ、みたいだね。」
溜息をつきながら言うと、土屋さんが
「自覚なかったんだ。」
と呆れたように言う。
「うん。貝沼さんといるところ見ると幸せだし、2人が悲しむようなことは起きて欲しくないって思ってるから、もう恋心とは違う形になってるのかなって思ってた。」
「やっぱ変わってるよ、伴内さん。」
「そうかもね。」
微笑むと、土屋さんがしばらくなにかを考えた後、
「協力してやろうか?」
と言う。
「協力?」
「俺が貝沼さんを誘惑して、2人を破局させようか?俺、たぶん貝沼さん落とせると思うけど。」
冷めたような顔で言う土屋さんを見る。
ハキョクサセヨウカ
カイヌマサンオトセル
理解できなかった言葉が、頭の中で何度もこだまする。
破局サセヨウカ
カイヌマサン落とせる
段々と理解が追い付き、ムワッと胸の中に感情が立ちのぼる。
「落ち込んだ東堂さんに優しくすれば、落とせるんじゃない?」
目を見て言われ、カッと自分の頭に血が上る。
「なに言ってるの?」
怒りがふつふつと湧き上がり、自分でも驚くほどの低い声が出る。
「人の気持ちを何だと思ってるの?」
土屋さんを見据えて言うと、「え?」と土屋さんがのけ反る。
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