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寒い夜
ストーブで汚れた部屋の空気を換えようと、窓を開けたら外を冬将軍が歩いていた。立派な軍帽を被り、上等な生地で誂えた軍服を着てピカピカの軍靴を履いている。
胸には重そうな勲章が数えきれないほどぶら下がっている。鼻の下にはピンと尖った髭が白く光り、腰には黒と金のサーベルがこれ見よがしに下がっていた。
大きな身体でビルの谷間を越え、高速道路をまたぎ、線路を踏みしめ、ゆっくりと、確実に、夜の町を歩いている。
そのうちに川を渡り山を越えた所で見えなくなった。
翌朝世界は白銀に染まり、私は風邪をひいた。
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