夢の君

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 彼女が運転する車に乗り、見慣れた国道を行く。彼女は部活の合宿でも運転してくれていたので、この横顔は何度か見かけた事があった。  合宿は夏だった。だから国道の横に見える田んぼは青々とした稲が輝いていたのを、よく覚えている。  しかし、この夢の中では畦道に赤々と彼岸花が咲き誇る。田の中には青さが薄れ、風に揺れれば黄金が微かに顔を覗かせる。  方向からして、北の方へ向かっている。私が今住んでいる街と同じ方角だ。 「どこまで行くの?」 「もう少し走るかな」  言いながら、ハンドルを切る。この道は高速へ続く道だ。彼女は「もう少し」と言ったが、恐らくもう少しでは無いのだろう。  高速に乗って行ける場所は複数ある。北、南、東…。大まかな方角だけで三方。更に北に進めばもっと多くのルートへ繋がる。  高速へ乗って、北へ走り出す。車で帰省した後に、家に戻る際に通るルートだ。公共交通機関を使う事もあるが、運転が苦では無い時は此方を選ぶ。  隣の運転席を見ると、彼女の顔が少しだけ青ざめているように見えた。 「大丈夫?サービスエリアで運転代わろうか?」 「大丈夫。保険の事もあるから、私が運転するよ」  唇の端を微かに上げて、断られた。確かに事故を起こす可能性があるので運転は変われないのだが、夢の中だ。どうせどうにもなりはしない。それよりも、彼女の体調が悪いのではないかと心配になる。  夢だと分かっているのに、変な話だ。
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