辿り着いた場所

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辿り着いた場所

 数時間のドライブの末、辿り着いたのは私の住む街から少し離れた山の麓だった。 「山に登るの?」 「うん」  車を駐車場に止めて、準備をする。足元を見れば二人とも普通のスニーカーだった。登山用では無いが、ヒールやブーツよりはマシだろう。服装を確認すればスッキリしたシルエットのスポーティーなパンツスタイル。ハイキング程度なら可能なはずだ。 「大丈夫。きのこ狩りとかで人も多く入る山だから。そんなに危なく無いよ」 「熊いる?」 「え、いないと思う…。でも鹿とか猿はいるから、気をつけて」  何に気をつけて歩けばいいと言うのか。 「鹿は飛び出してくるし、猿は持ってる食べ物を奪っていく」  暴走族と山賊か?とは思ったが、口には出さずにおく。山は恐ろしい場所だ。それでいい。  登山口にある無人の小屋を素通りして、山道に入る。そんな彼女に続いて、私も山道に入った。少し前まで雨が降っていたのか、土というよりも泥の上を歩いている気分だ。一歩毎に「ねちょ」という音が聞こえて、不快感が呼び起こされる。既にスニーカーが泥まみれで、夢だと知らなければ不機嫌になっていた事だろう。  1時間と少しくらい山道を歩いたところで、突然友人が道から外れ木々の中へ向かって行った。 「どこへ行くの?」 「いいから、着いてきて」  急に友人の声が真剣になったので、黙るしかない。そこから彼女も私も喋る事なく、黙々と道なき道を進んだ。  そうして十数分後。彼女は足を止め、此方を振り返って微笑んでこう言った。 「ありがとう」
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