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鮮やかな曙に空が染まる頃、焼き払われた村に辿り着いたマツリは、生き残った村人に捕らえられた。沙汰を待つ間もなくマツリは、村人達により私刑の対象となり、そのか細い身体は、男どもには蹂躙され、女どもには竹竿で殴打された。そして、まだ微かに息があるにもかかわらず、マツリは山中へとうち捨てられた。
小春日和の陽が僅かに零れる、ひんやりとした山の斜面で、腹這いに横たわりながら、マツリは遠のく意識の中、思う。
私は正しいことをしなかった。それは確かだ。だが、同時に、正しいことをもした、のではないか。そうとも思う。
マツリには分からなかった。自分が正しいのか、間違っているのか。
ひくひくと、細く、最期の息を吐く彼女の頬を、今更のように困惑の涙が伝う。
やがて、晩秋の強い風が、ざわっ、と山の木々と落ち葉を揺らし、マツリの涙をも掠めていったが、もうその感触をマツリが感じることはなかった。
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