脅威と憶測

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脅威と憶測

楓は身体を横にずらし僕の膝にコテンと頭を乗せて 「ここでなら、少し眠れそう・・・・」 と、呟くとすぅと寝息を立てた。 「楓?眠ったの・・・・か?」 覗き込むと眉間にくっきり縦皺を寄せ、何とも苦しそうな顔をしている。 しばらく、このまま眠らせておこうと思い、僕は綺麗に折りたたまれた状態でソファの脇に置いてあるブランケットで包みこむように楓の身体を覆った。 「・・・・うっ・・・うっ・・・・」 体勢が苦しいのかな?小さなうめき声に楓をソファに寝かせようと肩に手を掛けた時だった。 「・・・・にい・・・・さま・・・・か・・・・えで・・・・にいさま・・・・」 「!!!!」 僕の手は楓の肩に触れることなくピタリッと止まった。『にいさま』は史郎のことだと思った。違う。楓は『楓兄さま』と確かに口にした。 「なんで・・・・いまさら・・・・」 自分の心音が耳の辺りで聞こえる。こんな、楓さんの名前が出たことなど一度もなかった。この半年、確かに夜中にうなされる楓を何度も目にした。 だが、一度たりとも有理さんや凱さん、楓さんの名前を口にすることなんてなかった! 「なんで・・・・だ?」 益々早く強くなる心音が耳元でうるさく波を打っている。一気に脳に血液が流れ込んでくるような感覚に僕は目眩を覚えた。
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