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「先輩、あれって」   「そう。あの人、鯖しか食べないのよ」    サバサバ系と言われていた上司は、箸をお弁当箱ではなく缶詰に突っ込んでいた。  具体的に言うと鯖缶。  鯖の水煮、鯖味噌、鯖の醤油漬け、様々な鯖缶が並んでいた。  箸で掴まれたプリップリの鯖を、そのまま口の中へパクリと閉じ込めていた。   「健康を意識する年齢だから、とかなんとか言ってたわね」   「えええ……」    致命的に間違っている気がする。  鯖は体にいいが、鯖だけ食べて健康になれるわけではないだろうに。   「健康を意識って……いくつくらいなんですか?」   「三十五じゃなかったかしら」   「えええ……」    三十五で、鯖だけ。  栄養の知識が不足している気がする。   「本人に聞いたら、三十二って答えると思うけど」   「え?」   「あの子、いつも鯖読むのよ」   「えええ……」   「ちなみに出身は、山口県防府市にある佐波って場所らしいわ」   「えええ……」    そこもサバなの!?   「趣味はサバゲーらしいわ」   「えええ……」    ウォーキングとかで良くない!?  サバじゃなくてよくない!?  いや、個人の自由だけども。   「後、旅行。去年はサバンナに行ってたわ。」   「えええ……」    好きな芸能人聞いても、同じ言葉が返ってくる気がする。  想像だけど。   「アラブの方に砂漠も見に行ってたはず」   「えええ……」    いや、さすがに砂漠とサバを結びつけるのは無理が……。        どうやら、想像以上のサバサバ系女子だったようだ。
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