2 変わる世界

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2 変わる世界

 ――あれから十数年が過ぎた。  わたしはすっかりいい父親になっていた。  ロボットのおかげで、苦労することない生活を過ごしている。憧れだったAIが付いたロボットも何台か使用することができるようになった。  他の人達(国民)と同じように、ロボット達の収入だけで生活ができるようになったわけだ。  わたしはキリスト教ではないが『労働は罰』と言うではないか。  他の人達もその『罰』から開放されて、気楽に生活を楽しんでいるだろう。 「会って欲しい人がいるんだけど……」  それは、まだまだ子供だと思っていた娘からの一言であった。  ――いよいよ、その時が来たのか……。  娘が紹介したいというのは男であろう。  その後、名前を聞かされた。そして、職業が弁護士であるという。  どんな人物かなどの調査は、私が生まれる前よりも簡単になり、名前だけで検索して調べることができる。極端に個人情報を極秘にしていた時よりも便利になった。弁護士なら、なおさらだ。個人事務所ぐらい持っているであろう。  ――先に下調べをしておくか……。  だが、わたしは彼のデータを見て心配になってきた。 「なんでダメなのよ!」 「ロボットを3台しか持っていないような男に、お前を嫁がせるわけにはいかん」 「ロボットの数なんて関係ないわ!」 「そんなに少ない数のところに行けば、苦労するに決まっている。止めておきなさい」  3台というのは少なすぎる。すでにロボットの所有数が人の資産になっていた。  このわたしでさえ、10台近くを所有しているのだ。  それに、何だこれは!? 「ロボットに人権を!」  彼のSNSを覗くとそんな言葉が踊っていた。  確かに最近の人工知能(AI)は、人間と変わらない性能にまでなってきたと思う。  ニュースやバラエティ番組に、最新のAIを搭載したロボットがコメンテーターとして登場している。さらに試験的に学校での教師として、人型ロボットの使用が始まったそうだ。  だが、人間のように振る舞っても所詮は機械だ。  その機械に、人権を与えようなどと……。  そんな男のところにカワイイ娘を嫁がせるわけにはいかない!
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