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明日の来る日
明日、彼は死ぬ。
それはもう、覆しようのない未来だった。
生きる意味を求め、死ぬ理由を得た。
死ぬことが決まり、生きてきた意味を求めた。
永遠に尽きることは無いと思われた生への欲望が、いよいよ明日、命と共に尽きる。
明日訪れる死が、彼に安息を与える唯一の手段だと、彼の身内の一人が言った。
彼に安息など贅沢だと、別の身内の一人が言う。
一日中日の当たらない石造りの牢。
湿気が溜まり重たくなった空気は、息をする度に肺に詰まる。
それとは別に感じる、味がするほど濃厚なかび臭さと、何かが腐った匂い。
別れを告げに来た身内は牢のこの有様に、さっさと逃げ出してしまった。
残された彼はただ悶々と考え続ける。
自身の生きてきた意味を。
明日、その命が尽きるまで。
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