クリスマスの嘘

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娘 ねぇ、パパ。   昨日のクリスマスイブは、一体誰とどこにいたの? 父 …突然、何を言い出すんだ。 娘 答えて。正直に答えて欲しいの。 母 …やめましょう、クリスマスの夜にこんな話。ね?   そうそう。今日、ポチの散歩に行ったらね… 娘 (話を遮って)ママ!   私、もう、子どもじゃないんだよ。大丈夫。   もう、真実を知って傷つくような歳じゃない。 母 でも…。 娘 ねぇ、別のおうちの「彼女」は、   パパからのプレゼントを喜んでくれた? 父 …おい、発言に気を付けろ! 娘 何を偉そうに。   私がサンタクロースの正体を知らないとでも思ってるの?   ねぇ、別のおうちでサンタクロース役の、パパ? 父 …いつからだ。 娘 えっ? 父 いつから気付いていたんだ。 娘 っていうか、ずっとおかしいと思ってた。   毎年クリスマスイブの夜は、ママと二人っきり。   どうしてパパは、イブの夜だけは帰ってこないの? 父 …っ! 娘 こんなの、私たちに対する裏切りよ。   そうでしょ、ママ! 母 …例え真実を暴いても、   必ず幸せになれるとは限らないのよ?   大人はね、幸せのためには、ウソも必要なの。 娘 ママまで!そんなのおかしいよ!   だいたい、他の人だって…小学生だってみんな知ってるよ。   サンタクロースの正体は、パパだってこと。 父 他の人って誰だ?みんなとは、どこのどいつだ! 母 …あなたっ!落ち着いて! 娘 ママ!現実から目を逸らすのは、もうやめて!   パパは毎年、家族を捨てて、   別の女の家でサンタクロースになって過ごす。   そうでしょう?ねぇ、パパ、答えて! 父 …一緒にいるのは、女だけではない。 娘 え…何、どういう意味? 父 男もいる。それも、不特定多数の男女だ。 娘 嘘でしょ?信じられない! 父 過ごすのは、主に寝室。一夜限りの関係だ。 娘 はっ!ママも知ってたの?知ってて黙ってたの? 母 …そうよ。でも、これはパパの大事なお仕事だから。 娘 聖なる夜に不特定多数の男女と寝室で過ごす?   それがお仕事だっていうの?大人って汚い! 父 仕方ないだろう。   これも世界の子どもたちの夢のためだ。 母 うっううぅ…(泣)。 父 ちなみに庭で飼ってるポチも、   あれはずっと鹿だって言い張ってきたが、本当はトナカイだ。 母 …ポチは、鹿よ?鹿に決まってるじゃない。   ちょっと大きな角があるけど…鹿だって角あるでしょ? 父 いいんだ…もう、偽るのはやめよう、ママ。   私が本物のサンタクロースなばっかりに、   おまえたちには、寂しい思いをさせてすまなかった。   しかし、これは最重要国家機密。   娘といえども、子どもに正体を知られたら、   サンタクロースの資格をはく奪される。   私の身柄は組織に拘束され、厳しい罰を受けることになるだろう。 母 あなた…! 娘 嘘よ!こんなの嘘よ!   ごめんなさい。私が真実なんて知ろうとしたから…! 父 …ほら、もう迎えが来たようだ。   二人とも元気でな。メリークリスマス。 ―――――――――― (パトカーのサイレンの音) 父  …というわけで、私はサンタクロースだと    娘に正体を知られてしまった罰として、    公衆の面前で辱めを受けているのです。    お願いですから、そっとしておいてください。おまわりさん。 警官 いや、お父さん、どう見ても、おかしいでしょ。    上半身裸に、生クリームとイチゴで    ぽっちりデコレーションって… 父  私の二つの胸のふくらみは、    このイチゴより大きいでしょうか?小さいでしょうかっ? 警官 いや、そういうことじゃなくてね。 父  正解は、ここの生クリームを    じっくり舐め取ってもらえればわかります!    クリスマスも忙しいおまわりさんに、    サンタのおじさんから    心ばかりの小さなクリスマスプレゼントです!さぁ! 警官 …お話は、交番でゆっくり聞かせてもらいますね。
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