趣味は人生

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「乾杯」と合わせたグラスはいい音をたてて、久しぶりに会う私達を歓迎した。 こだわりのパスタとソースをフォークに絡めて口に運ぶと、良いワインを上品に飲む。 食事もほとんど済んだ頃、 「聞いてよ、お父さんに結婚相手を勝手に決められたの。勝手に。政略結婚ってやつ」 突然愚痴を吐き出された。 お父さんか結婚相手か政略結婚か、それとも全部になのか。 「ご愁傷さま」 まぁ、私の人生じゃないから関係ないし特に興味もないのだけど。 「ちょっと、もっと他に言う言葉があるでしょ。慰めるとかさ…もう、冷たいなぁ」 そんな事言われてもね。 私の性格を知って今の今まで付き合っているくせに、今更何を言ってるんだか。 でも、聞いてあげないこともない 。 「それで相手は?」 「NNCの息子」 あぁ、あの大企業の息子さん。 お金も地位も、それに顔も整っていて申し分ないと思うんだけど。 「何が不満なの?」 「お父さんが決めた事」 「なるほどね」 彼女の心底嫌そうな声を、ワインと一緒に胃に流し込んだ。 この子、未だに父親のことが大嫌いらしい。 昔から厳格な人で頑固。子供には完璧を求めるような人間だから大変そう。 と思っていたけど、人はそう簡単には変わらない。 「でも、相手のことが嫌いってわけじゃないのね」 私は分かりきっていることを、わざと言葉にして彼女に渡した。 「当然よ。爽やかな犬系男子で、優しくて気遣いも仕事もできる。申し分ないくらいだもん」 なんたって、この子の好みドンピシャ。 ただ、父親が決めた相手だということに不満を抱いているだけで、それ以外に問題はないのだと。
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