趣味は人生

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「それより美那はどうなの?」 「何がかしら」 急に無理やり曲がって変わった会話。面倒くさいわ。 「何がって、またすっとぼけて」 彼女が私にどうなの?と訊いて来る時は決まって男の話。 「男の話なら出てこないわよ」 何度もそう言ってるのに懲りないんだから。 「またまた〜。そっちの副社長に口説かれてるの知ってるんだから」 「はぁ…そんな情報一体どこから…」 1度も話したことなんてなかったのに。この手の噂は社内だけじゃなく、一気にどこまでも広がっていく。 面倒くさいし話したくないなとワインを飲み干しておかわりとデザートを追加注文したのだけど。 「ねぇ、教えてよ」 聞く気満々で、早く話してと言わんばかりに目を輝かせている。 「お待たせいたしました」 「ありがとう」 注文したワインを受け取って、それを1口口に運ぶと、溜め息を吐いて仕方なく話し始めた。 「うっそ、やだぁ」 話を聞き終えると興奮が収まらない彼女。 こんなのを聞いて何が楽しいのやら。気持ちがわからないわ。 「全然男の気配がなかった美那に、ついについに春が」 嬉しそうにしてるとこ悪いけど。 「私、彼と付き合う気これっぽっちもないから」 上がってたテンションを一刀両断させてもらった。 「嘘でしょ…」 あんないい男を?と信じられないコイツとその目が語っている。 「私にだって選ぶ権利くらいあるわ」 「いやいや、そう言って高校から男ができてる様子ないじゃない」 「私の人生だもの。男くらい自由にさせてよ」 と告げれば、彼女はワインを一気飲み干して私を指さすと、 「そんなすぐ突っ撥ねるんじゃなくて、一度喰っちゃえば?」 もしかしたらものすっごく相性がいいかもしれないじゃん、とお嬢様らしからぬ言動をみせた。 体から始まる恋、あれはフィクションの中だけであって本当にノンフィクションで起こりうると思ってるのかしら。 それに、私には新しい恋は必要ないもの。
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