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闇の相談所
男はPCを見ながらボソボソ言い始めた。
「この大学の奴でお前以外で4人か…?男が3人、1人は女か。」
僕は『ビクッ』となった。
「この男とは……こいつとは相性が合わなそうだな。こいつと話が合いそうなやつ…」
・・・・
「ふ~ん、なるほどな。お前が何故言わないのか?分かったぞ。お前が好きな人だったから?違うか?」
やはりこいつは俺自身を見透してるように思えた。
「大体お前は大学に2年も通ってない。って事は親友ってような奴はいないだろう。自分が死ぬかも分からない時に親友でもなく、ちょっとした友達位なら、お前みたいな根性なしは直ぐに売るさ」
そう言った後、彼は立ち上がりソファーの後ろにある棚の扉を開けた。
そこには数えきれない程のお酒があり、その中のブランデーとお洒落なコップを持ち出した。
そして、ブランデーとコップを持ちソファーに座った。一口ブランデーを飲むと僕に向かって言った。
「だが、惚れた相手なら別の話だ。お前はあまり友人とか居ないから、その子しか話しかけてくれなかった?だから余計に好きになってしまった?違うか?だから死んで欲しくないと願う訳だ。別に付き合えるかもわからん女に」
全て見透されていた。そもそも大学がつまらなかったのも友達とか居なかったからだ。
だけど、先輩だけ僕によく話しかけてくれた。
僕はこの人は一体なんなのか恐怖心とともに興味も沸いた。
「まあ、いい。既に恵里香から聞いてるはずだが、俺がここのオーナーのヴォイクだ。まあ、この女を殺せとか処理しろとの依頼もないわけだ。俺は金にならない事はしたくないし、俺が手を下す必要もない。」
と言うとまたブランデーを飲み始めた。勇気を出してヴォイクに訪ねた。
「闇の相談所とはなんですか?」
ヴォイクは俺を一瞬見た後、またブランデーを飲みながら答える。
「相談所ってのは他で無理だと断られた事を引き受ける。それだけの事だ。」
僕は一つ気になった。何故、闇なのか?それに対しては答えてくれなかった。そんな僕を見るや否やヴォイクは言った。
「お前は平和ボケしてるから、分からないが世の中全て闇なんだよ?むしろ闇が表で正は裏なのかもしれないな?」
するとヴォイクのスマホが鳴った。
「ああ、俺だ。」
「サイトを勝手に教えたやつ?ああ分かったよ。最上みずきって女だ」
「ああ、分かった。処分は俺がする」
「ああ、それと俺の処分の仕方には口出しはするな?」
「…ああ、分かった。じゃあな」
電話を切るなり僕に言った。
「どうやらお前の好きな女は処分しなきゃいけないようだ。残念だったな…」
また僕は涙が出てきた。俺は泣きながら土下座をして言った。
「どうか彼女を助けてあげて下さい」
ヴォイクは少し冷めたような感じで
「仕事だから無理だ」と言い立ち上がった。
僕はヴォイクがテーブルの上に銃を置いたままの状態に気付いた。そして銃を取りヴォイクに向けた。だがヴォイクは冷めた視線で
「俺を殺しても女は違うやつが始末するだけだ。それと俺は処分するとは言ったが始末するとは言っていない」
───えっ?
どういう事だ。と思ってたらいきなり顔を蹴られた。
「ここでは俺が絶対だ。俺の物に気安くさわるな。そもそもそのルガーはロックされてるのに打てる訳がないだろう?俺がそんなに無用心に見えるか?まあ、ロックしてても解除したら誰でも使える。だが素人がとっさの判断でそんな事出来ると思うか?お前が俺にルガーを向ける時はとっさの行動の時だけだからな」
──────
「まあ、なんでもいい。明日お前の好きな奴の処分をする」
僕はどんな処分をするのか気になったが痛くて声が出ない。そんな俺を見るなりヴォイクが鼻で笑って
「どこかで働いてもらうだけだ。安心しろ。闇バイトに登録されてる所ならどこでも大丈夫なんだよ。だが、普通の求人と闇バイト両方で募集してる所がある。まあ、闇バイトからでは不可能だがな」
「明日教えてやる。後、お前の部屋も用意してある。来い。」
僕はフラフラになりながら歩いた。先程の一撃がこんなに強いなんて……本当にこの人何者なんだ?
そして事務所の入り口の反対側にドアがあり、開けると廊下があった。廊下を少し歩くと頑丈なドアがある。暗証番号と指紋センサーで認識しているらしい。ヴォイクは指紋センサーを解除した。
「この指紋センサーは俺と後1人しか開ける事が出来ない。お前が入りたいときは俺に言えっ!それとお前の部屋は右側の一番奥だ。好きなように使え。この仕事は最低でも3年はやらなくはならない。もし途中で逃げたりしたらお前は死ぬ」
そう言って、先程の事務所に戻ろうとした時もう一言
「後、部屋にあるものは全て使っていい。部屋にある食べ物、飲み物も好きなようにしろ」
と言い残して行った。僕は部屋に入る事にした。部屋はビジネスホテルのようになっていて綺麗だった。トイレもシャワーもある。住み込みでこの状況は、良かったのか?悪かったのか?
だが不安は消え去りはしなかった。みずきさんがどうなるのか?自分自身もこの先どうなってしまうのか分からない。
疲れと痛みと久々の温かさからか直ぐに眠りについた。
その頃ヴォイクは電話をしていた。
「もしもし、ヴォイク?久しぶり」
「ああ、久しぶりだな……みさ、お前に一つ頼みがあるんだが」
「何?」
「あるバカな女をそこで雇って欲しいんだ。大丈夫か?」
「いいよ。でもどうしたの?急に?」
「サイトの違反をした奴の処分をしなくちゃいけなくてね?お前の店ならと思ったのさ」
「私の店ねぇ?作ったのはヴォイクだけどね」
「そうだな……」
「ヴォイク……ぅうん……大揮…また会いに来てね……?」
「……本名で呼ぶな、ヴォイクだ。ああ、分かった……」
「うん……ヴォイク、またね」
電話を切った後しばらくスマホの画面をみつめる。「後は、ボスに電話すればいいだけか……」
ブランデーを一口飲んだ。
「恵里香とみさか……?」
ブランデーを持ち立ち上がると窓に移る景色を見ていた。今日は三日月が綺麗だ。
ヴォイクはブランデーを一気に飲み干した。時間は深夜0時を過ぎていたが明日の仕事の準備をする。
そしてそれは浩司の初めての仕事でもある。明日のためヴォイクも眠りについた。
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