最上みずき

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最上みずき

「最上みずきの場所はこの近くだ。」ヴォイクは電話を掛け始めた。 「すぐる、俺だ。どうだ。最上みずきには接触出来たか?」 「ああ、ヴォイクか?今、一緒に居るぞ。新宿の○✕に居るから来てくれ」 「ああ、今ちょうど近くだ。そこか、じゃあ切るな」  電話を切った。「あそこに居るのがお前の好きだった奴か?今も好きなのかは分からないが」そう言われて僕は首を横にふった。 「薄情なやつだな?」ヴォイクは車から降りて知り合いにお金を渡していた。かなりの金額のようだ。  そして、最上みずき、《先輩》に車に乗るように指示をした。先輩がこちらに向かって歩いてくる。すると先輩は僕に気づいたのか下を向いた。 「じゃあ、みずきだっけ?後ろに乗ってくれ」 「……はい」  そして、ヴォイクが助手席の方に来て窓を開けろと言ったので窓を開けた。「お前も後ろに乗れ」と言われ、後ろの席に乗った。  先輩の横に座ると緊張した。と同時になんであのサイトを教えたのか?と少し苛立つ気持ちもあった。しばらく沈黙が続いた。その沈黙を断つかのようにヴォイクは先輩に質問をした。 「最上みずきで名前合ってる?」 「はい……」 「隣の奴にサイト教えなかった?」 「はい……」 「あのサイトは一般のやつには教えてはいけない事知ってた?」 「いえっ……知りませんでした。」 「……まあ、いいか。っで誰に教えてもらった?名前は?」 「名前は知りません。何も教えてくれなかったんです」 「何も教えてくれなかったねぇ?じゃあ、サイトは何年前に教えてもらった?」 「1年半前に教えてもらいました。その時に『お金に困ってる子が居たら、このサイト教えてあげて』とも言われました」 それを聞いた時、ヴォイクはいつになく険しい顔になった。 「それは本当か?」 「はい……このサイトを通せばお金持ちになれると……。後、その人はお金いくでも出すから自分の事は誰にも言うなって……それで名前も何も教えてくれませんでした」 「ちっ、それが本当なら黒幕は始末しなくては。まあ、いい。後でそいつの事は俺が調べる」 そして、車を発進させた。 「最上みずき、お前のそれが本当だとしても隣に居る馬鹿にサイトを教えた事には変わらない。これからお前は10ヵ月で500万をサイトのオーナーに支払え。そのための手立ては出来てる」 「はい……分かりました。先程一緒に居た方からある程度は聞いております。私は売られるんですよね?」 「まあ、そんな所だ」  僕は思わず言葉を発した。「風俗じゃないって言ってたじゃないですか?先輩は悪くないのになんで売るんですか?ならせめてヴォイクさんの所で働かせてあげてくださいよ?」 「お前は黙ってろ。後、俺は女は雇わない。さっきも言ったが世の中なんてそんなもんだ。強いものだけが生き残る時代なんだよ。今も昔もな」するとヴォイクはスマホを取り出し電話をかけた。 「もしもし、みさか?今から連れてくけど大丈夫か?」 「大丈夫だよ。あっあのね……ヴォイク少し位顔見せてくれる?」 「さあな。とりあえずボーイのやつに渡しとくよ」 「私がこの店のオーナーだから私が引き取りに行く。だから少しだけでもいいから……」 「俺には関わるな……お前にはお前の家庭がある。俺に関わるとろくな事はない」 「分かってる。でも私は貴方に会える事だけを信じて今日だって頑張ってるの。お願い。少しでもいいから……」 「今から引き渡しに行く……」 そう言って電話を切った。 「今から知り合いの店に引き渡すから、いいな?ナイ○LUVASって店だ」  僕はビックリした。そのお店は僕でも何故か知っているからだ。大学の奴がそこの店の娘に大金を使って破産したからである。その娘の名前もよく覚えてる名前は『神林ミサ』だ。 「えっ!ヴォイクさん。さっきミサって言ってましたけど、もしかして『神林ミサ』ですか?」 「あっ、そうだがそれがどうかしたのか?」 「そこの店のNo.1ですよね?」 「あいつはNo.1だろうがオーナーだがら別に関係ないだろ?いちいちうるさいやつだ。もう店の前だ。そこの裏の駐車場に停めるぞ」 「僕も行っていいですか?僕も会ってみたいです」  僕は隣に先輩が居るのにも関わらずそう言ってしまった。 「好きにしろ」 車を裏口の駐車場に停めて、車から降りる。すると、人気のない所にドアがあった。だが、自動ドアがロックされている。ヴォイクは、何故か自動ドアセンサーを解除出来た。 「なんで開くんですか?」 「さあな」  ドアを開けて直ぐに階段がある。階段を登って2階に行くとエレベーターがあった。このエレベーターもタッチセンサーが付いている。ヴォイクはセンサーにタッチした。エレベーターのドアが開く。3人はエレベーターに乗り一番上の10回へと行く。  10回に着きエレベーターを降りた。エレベーターのドアが開くとそこにはとても綺麗な人が待っていた。 「ヴォイク……」涙ながらにヴォイクに近づくがヴォイクは先輩を前にだし、 「この娘を頼む」と言って先輩を引き渡した。そして、後ろからボーイの人が来て先輩を奥へと連れてく。僕は思わず「先輩!!」と叫んだ。そして先輩の方へと歩く。  先輩は振り返り、ちょっと笑って「ごめんね。ありがとう」と言って奥に連れいかれた。僕は結局なにも言えなかった。そしてヴォイクの方を見る。神林ミサは泣きながらヴォイクに抱きつく。ヴォイクは澄ました顔でただ真っ直ぐ見るだけだった。 「ヴォイク……また来てね?顔見れるだけでいいから。また一緒に暮らしたいとは言わないから」 「気が向いたらな」 「最後にあったのも何年も前。私は貴方しか見ていなかった。私は今だって貴方の事が好きよ……」  そう言うと神林ミサはヴォイクにキスをした。ヴォイクは振り返り「じゃあな、おい、お前帰るぞ」と神林ミサの顔も見ず、エレベーターへと向かった。神林ミサは泣きながらもヴォイクに手を振っていた。  エレベーターのドアが閉まる。ヴォイクは無言だった。車に乗るまで一言も話さなかった。そして車に着いた時に「お前、助手席に乗っていいぞ」の一言だけだった。  それにしても何故この人は美月恵里香といい、神林ミサといい綺麗な人が周りにいるのか?そして、神林ミサとの関係を聞かないではいれなかった。 「あの、神林ミサさんとは付き合っていたのですか?」 「さあな」 「一緒に暮らしたいってのは?」 「さあな」  僕は一番聞いてはいけないと分かっても聞いてしまいたい事があった。聞きたい。でも、聞いたらどうなるか?そう思いながらも勝手に口が動いてしまった。 「さっきキスをされていたんですが、絶対に付き合ってましたよね?」  ヴォイクは一度僕を睨んだ。僕はあまりの怖さに金縛りにあったようになにも言えなくなった。だが、意外な返事が返ってきた。 「ああ、かなり昔の話だ。」 「えっ!怒ってないんですか?」 「お前にキレても時間と体力の無駄だ」 「やっぱり付き合ってたんですね。電話の時、ミサさん家庭あるって言ってましたけど今は結婚しているんですか?」 「さあな。結婚はしてないのかもな?」 「えっじゃあ、家庭ってなんでですか?」 「さあな」  俺はこれ以上は聞いてはいけないような気がして、話を変えた。 「先輩はあの店で働くんですよね?」 「ああ、そうだ」 「キャバ嬢って事ですか?」 「まあ、そうだ」 「なんか良かったです。風俗とかじゃくて」 「そうか?」 「はいっ、風俗とかやってた女と付き合いたくないですし。まあ、パパ活やってたから、もう無理ですけど」 「お前に1つ言っておくが、確かにお金が欲しいからパパ活をしてただろう。だか、お前の価値観だけで人を見下すな!所詮お前は自分の価値観でしか見れない。人は誰かのために生きる訳じゃない。自分のために生きてる。ましてやお前の彼女でもない」  僕はヴォイクの言葉に何も返せなかった。そして、美月恵里香の言うこの人の優しさが分かった気がした。    そして、僕の最初の仕事が終わった。闇の相談所の闇っぽさはなく、簡単な仕事だった。報酬は0円だった。   
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