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W不倫
「今日は人が来るから片付けておけ。」朝早くからヴォイクはソファーに座りながら部屋の片付けを命令した。
「誰か来るんですか?」
「客だ」
「お客さんってこんな朝早くに?」
「そうだ。くだらん依頼を頼んできやがって」
「もう内容分かっているんですね?一体どんな?」
「W不倫だ。慰謝料が払えないからなんとかして欲しいらしい。まあ、どうせ逆に慰謝料をもらえるようにとかの考えだろうな」
「慰謝料をもらえるようにって出来るんですか?」
「やってみなきゃ分からない、まあ、俺が知ってるのは不倫がバレて慰謝料が請求されてるって事だけだ」
「じゃあ、可能なんですか?僕は無理だと思うんですが」
「客観的に見たらそうだろうな?まあ、依頼は依頼だ。それとお前に渡したいものがある」すると紙を渡された。何か書いてある。
「最上みずきの連絡先だ。LINEでもしてやれ」
そう言って珈琲を入れた。ソファーに座って今日は紙タバコを吸いながら珈琲を飲んでる。「そろそろだな」そう言うと監視カメラの映像を見始めた。
─なるほど。あの時監視カメラで恵里香さんと一緒に居るのが分かったのか?と今やっと謎が解けた。
「客が来たから駐車場まで行け。そしてここまで連れてこい。変な荷物は持って来させるなよ」
「はい。直ぐ行きます」
モタモタすると怒られそうなので走って客の居る駐車場まで行った。
駐車場に行くと男女が二人居た。男は真面目そうで黒髪、眼鏡をかけ、少し痩せている。身長は170センチ位で自分より少し高かった。女の人少し茶髪に染めてはいたが、ピアス等の装飾品はなく、身長は160cm位だろうか?もの静かな感じで、二人とも不倫には程遠いような人だった。
「いらっしゃいませ。相談所までご案内します。」二人の男女は軽く会釈をして付いてきた。
「すみませんが金属等あると鍵が開かない仕組みになっています。スマートフォンも持ち込みは禁止となってるので、この箱で保管させてもらいますが……」
男は箱にスマートフォンだけ入れた。女の方はバックを箱に入れたのが分かった。
「すみません。たまに刃物やら銃、盗聴器を持ってくる人いるみたいで、オーナーを用心深いくて。ベルトはしたままでも大丈夫みたいなのでそのままドアに立って下さい」
二人はドアの前に立つ。ドアのロックが解除される音がした。ヴォイクの居る事務所に連れていく。
事務所に入るとヴォイクがソファーに座っていた。客の二人を見るや「そこに座ってくれ」ヴォイクの向かいのソファーに二人は腰掛けた?
「じゃあ、名前を教えてもらうかな?まずは男から」
「はいっ。佐藤まことと言います」
「じゃあ、あんたは」
「武田みなです……」
「今日はどうして欲しいのか分かるように言ってくれ」
「あっ……とっ……なんと言うかですね?不倫なんですが」男は少したじろぐ。
「不倫をどうしたい?」
「あっ、はい……不倫がみなさんの夫にバレてしまいまして。双方から500万ずつ慰謝料の請求があったのですが、みなさんも同じ額の請求でして……合わせて2000万円の支払いをしなくてはいけないのですが……その金額を払えないのでこの相談所にきました」
「金額を下げたいのならその変の弁護士やら雇えばそれで済むだろ?あんたらが払える金額まで下がる。何も闇の相談所なんか使う必要なんかない」
「私はそれでいいのですが、まことさんがそれでもダメと言うのです」
「ふ~ん。なんでそれではダメ?」
ヴォイクは男を見た。男は焦るように言う。
「いやっ、1銭も出したくないと言うか。やはり出さなくていいのならって思いまして」
「うちに依頼するならどのみち金はかかる。そうだなぁ?2000万請求されていた訳だ。うちへの報酬は2人合わせて1000万は払ってもらう。なら弁護士に頼んだ方が安いと思うが。違うか?」
男は少し考える。そしてヴォイクを見て言う。
「構いません。二人で1000万なら払います」
ヴォイクは男を疑い始めた。
「おい、浩司、今からこの紙に書いてある事をこの男に質問しろ」なにやら紙に書き始めた。書き終わると紙を俺に渡し、指を指した。
「入り口を出て左に行くと小屋があるそこでこの紙に書いてある質問をしろ」
「わかりました」
「女も男もほとんど同じ質問をさせてもらう。じゃあ、お前まことだっけ?あいつに付いていけ。女の方は俺が聞く」
「じゃあ、すみません。まことさん僕に付いてきてもらえますか?」
軽く頷き僕についてきた。ヴォイクは僕達が出るのを確認すると武田みなに質問をし始めた。
「じゃあ、先ずあの男とはいつ出逢った?」
「はいっ、確か1年半位前かと」
「じゃあ、1年半前まで旦那とのセッ○スは」
「いえっ、ありません」
「旦那とはいつからしてない?」
「結婚して直ぐです」
「結婚したのは?」
「結婚したのは3年程前です」
「じゃあ、あんた今31だから、28歳の時か?結婚式、新婚旅行は」
「……はい。28の時です。結婚式も新婚旅行したし、行きました。新婚旅行はハワイに行ってその時は旦那も優しかったんです」
ヴォイクはちょっと考えながらまた質問をした。
「旦那の今の年収はいくら?後、結婚する前、そうだな?結婚する1年前位の年収は」
「ちゃんとした金額は分からないのですが、今は1200万位だと思います。4年前は確か600万位です。結婚して直ぐに何か成功したみたいで、副業とかからの収入が多くなったみたいです」
「なるほど、、」ヴォイクは何か察したようだった。
「旦那は結婚して間もなくからあんたに対して冷たくなかったか?そしてレスになったのは旦那が拒んだ?違うか?」
「はいっ、そうです。私が誘っても夫は乗り気じゃないみたいで……」
「っで不倫をした?そうだろ?」
「はいっ、そしたら数ヶ月前に探偵を雇っていたみたいで……」
「あの男はどこで出逢った?」
「友人にご飯を誘われて、そしたら何故か男の人が何人か居ました。その内の一人がまことさんで」
「友人とはどこで知り合った?」
「友人は大学時代の友達です」
「その友人とあの男の接点は?」
「それは……すみません。分からないです」
「とりあえず今日はここまででいい。また後日また聞きたい事あったら来てもらう」
「分かりました」
質問を終え、電子タバコを吸いながらヴォイクは珈琲を飲み始めた。しばらくすると浩司と男が一緒に戻ってきた。
「終わりました。聞いた事は紙に書いてあります」
「ああ、じゃあ今日は2人とも帰ってくれ」
そう言って二人を帰らせた。
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