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「お見舞いありがとう」
おっす。オラ野軒歩。クラスメイトのほとんどからノノって呼ばれてるよ。
今日は、ようやく翔先輩のお見舞いにこれたんだ。
行きたくても、なかなか外出許可が下りなかったからね。仕方ないね、あんなことの後じゃ。
「爽は元気?」
「はい、元気です」
ドキッとしたけど、なんとか返したよ。
「沙羅はよく来てくれるんだけど、あいつ一度も顔を見せないから」
爽さんにとって、自分を庇って生死さまよった幼なじみだ。どんな顔して会えばいいのかわからないのかもしれないよ。
「いーや、違うね。あいつは、俺が考えていることを正しく理解している。だから来ないんだ」
怒ってるはずなのに、ぷりぷりと可愛い効果音が聞こえたような気がした。
いや、でも、どゆこと?
「どうせ、病院には来てるんでしょ?」
またギクリとした。今度は誤魔化せなかったよ。すまんな、なんて心の中で爽さんに謝る。
「まー爽はオレたちの会話の内容は聞かないと思うし、先にオレから君へいくつか話しておくね」
あ、はい。おなしゃす。
「まず、オレのことね。完治まであと半年くらいかかるって。明日に退院して、明後日から学校に戻るよ。でも、リハビリしなきゃだし通院は必須だし、いつもよりも全然動けなくなるし、学校にもしばらくいないかな」
学校には戻る(いるとは言っていない)ってやつですねわかります。
「あとは、沙羅のこと。あの子の学校生活に極力関わらないで欲しいんだ。兄離れ……じゃなかった。独り立ちさせないと。プライベートは、嫌がられるくらいじゃんじゃん絡んじゃっていいから。オレもよくやる」
兄離れって、絶対わざと言ったでしょ。
「あとは、君のこと」
え、僕?
「そう。オレのメール、見てくれた?」
「……あ!!」
僕の恋を応援するよってやつか! あのメール、本当にびっくりしたんだからね! 遺言かと思ったんだから!
「爽について前情報あげる。あいつ、全然自分のこと話さないでしょ?」
それな。わざとだと思ってたけど、あれ、性格だったのね。
「まずね、今まで見てきた爽のこと、忘れた方がいいよ」
HAHAHA。なにをおっしゃるか。
「沙羅もあるけど爽は特に、自分の仕事のために作った設定と性格だから。全てとは言わないけど、なかったことにしないとあいつの性格わからなくなるよ」
あー……恋愛バブちゃんの方が素で、なんでも超人マンは爽さんが頑張って作った努力の賜物だ、ってこのかな?
そういえば、たしかにプライベートだからって言ってたときの方が幼く見えてたもんなぁ。
「他の人は、書類上のーってことだけ知ってて、仕事で性格まで偽ってたなんて知らないからね。最初の方は、その面出すと思うけど、少しずつみんなに気づかれないように無くしていくと思う」
「えーじゃあホントの性格ってなんですか?」
「ないしょ〜そこまで教えないよ」
なんでやねんねんねん。
「オレが説明したことで、爽をそういう風に見ちゃうでしょ? そうじゃなくて、自分で判断するといいよ。相談には乗るからさ」
言い分わかるけどさ、きになるじゃないか。
けちけちーどけちー。
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