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「じゃあ、爽のことをひとつ。よくさ、あいつに心読まれてるって感じることない?」
「ありまくりんぐです」
エスパーなんじゃねくらい言動読んでくる。先読み者かあの人。
「そういうことをしないといけないとだめだった環境で過ごしてきたから、あいつ、よく人のことをみるんだ」
「たしかに、言われてみれば」
ちらっとたまに目が合う気がしてたけど、あれは目もそうだけど、人の表情読んでたのか。
「爽は……」
翔さんは言いかけて、うー、と悩んだ声を漏らした。
「言おうかなー言っちゃおっかなーまーいっか言っても」
言いたがりか。
「爽はね、自分のことがよくわかってないんだよ」
「どゆことですか」
「だから、その、ずっと自分以外の誰かのことを気にしながら生きてきたから何考えてるかが見えるようになったわけじゃない?」
「あーなるですね。あれですね、人が考えてることなのか自分が考えていることなのかどうかわからなくなるってやつですか」
「そーいうことー」
それなんだっけ。どこかの論文で見た事ある気がする。
「たまに見かけるんだ、そういうタイプ。爽もそれ」
「ほへー」
僕は初めて見るタイプだわねん。
「文章読むだけでもだめになったり、人の悪意とかにも敏感になっちゃって疲れてるところをよく見るんだ」
あーそっか。いいことばかりじゃないのか。
むむむ。難しいのである。
「だからさ、爽のわがままはなるべく聞いてあげてほしいなーとは思う」
「わがまま」
「そうそう。あいつ、俺にしか言ってこないの。もう少しお友達作りなさいっていう親心ですよ」
「あなた何歳ですか」
「やだなぁ。ぴちぴちの17歳ですよ」
沙羅たんが、爽さん落とすの鬼門レベルって言ってたのはそのためか。
「ま、頑張れ若者。アオハルを謳歌せよ」
「じじいですか」
「うん。オレもう疲れたもん。休みたい」
寝る、って言ったあと、翔さんは寝てしまった。自由人か。
僕の聞きたかったことは……うん。後でメールでもするか。
さーて、爽さん待ってるから帰ろーおうちじゃないけどおうちにかえろー。
「早かったな」
病院の外に出ると、ベンチに座っていた爽さんに声をかけられる。
相変わらずだぜちくしょーが。
「うん。あの人、言いたいことだけ言って寝ちゃった」
「仕方ない。あいつはそういう性格だから」
爽さんとぱっと目が合った。
……あ、やべ。思わず目を逸らしてしまった。
「これから帰るだろう?」
「うん。帰る」
爽さんは、全然気にした様子はなかった。なんだかほっとしてしまった。
はっ。まさかそれを読んで……ってダメダメ。あんまり翔さんの言葉に引きずられないようにしないと。
「翔に俺のことでなにか言われたんだろ?」
「えっ?」
素のえが出ちまったぜ。
「もしかして聞いてた?」
「外にいただろう。何を言ったかだいたい予想つくだけだ」
「ほんと? 試しに言ってみてよ」
「俺の性格のことで」
「いや、やっぱいいです」
あぶねー!! この人あぶねーー色んな意味で!!
「わかりやすくて助かる」
くすくす笑ってる爽さんはめちゃくちゃ楽しそうで草。
「今日は付き合ってくれてありがとうございます」
話題を逸らしとこ。これ以上突っ込んだらいじられ倒されてやられる未来しかないからな。
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