最終章・black Rose〔貴方は私のもの〕

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 それが憧れの様な恋だって気がついたのは、伊吹に抱かれた後だった。 「辞職はしなくてもいいでしょう。彼はそんな事を望まない」 試験を頑張る様に。柊斗は私を責めずに立ち去って行く。  伊吹が体調を崩しているなんて。思い上がり? 私のせいなの?  その数日後、危惧していた連絡が叶大へと入った。 「伊吹さんが倒れたって」 外出先で倒れたらしく、叶大は伊吹を見舞うと本宅へと急ぐ。 「何かあれば連絡するから」  一緒に行くわけにはいかない。仕事が終わり私は自宅マンションへ。  伊吹の様子はどうなんだろう。不安な思いでいたら、携帯電話が着信を告げて鳴り響いた。 「……伊吹さん!?」 『何をしてる?』 「なにも…… それより身体は? 倒れたって聞いて」 『大袈裟だな、柊斗だろう。ただの軽い目眩だよ』 よかった。ほっとした瞬間、ふっと気が付く。 「伊吹さん、あの、今どちらですか?」 叶大が本宅に行っているはずなんだけれど。 『あぁ、穂香のマンション前』 ――な、なんでっ!? 
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