02 千代、拾われる

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02 千代、拾われる

 ぜんぜん、人が通りません。  それに、お腹がすきすぎて力が入りません。  ぐぐぐーう!  でもお腹の虫はすこぶる元気!!  恥ずかしいっ!  思わず顔を覆いたくなりましたっ!  でも人が通らないから、恥ずかしがる必要ないですけどねっ!  ぶるぶるぶる。  冷たい地面に体をずっと投げだしていたので、寒気がしてきます。  このままじゃ、シャレにならないです。  本当の本当にピンチです。  異世界転移した直後に、空腹で行き倒れ、そこから干物に直行。  そんなの嫌ですっ!  乙女が辿って良い結末じゃないですからっ!  誰か助けてーっ!  叫びたいけど、声を張り上げるほどの元気がわきません。  あいかわらず地面と密着したまま。  私は「ぐぐう」となるお腹を押さえながら立ち上がろうとしますが、足に力が入らなかったので、またすぐにばったり。  うぅっ。  私はこのまま、どこかも分からない所でのたれ死んでしまんでしょうか?  千代(状態:ミイラ)に決定なんでしょうか? 「誰かぁ」  ううっ、涙が出てきましたっ。  こんなよく分からないところで、一人ぼっちなんて嫌ですっ!  そのまましばらく絶望の未来予測に涙していましたが、そこに人の気配が近づいてきます。  まさか、誰かが気がついてくれたっ?  視線を上げると、緑髪の、繊細そうな風貌の青年が目の前に立っていました。 「大丈夫かい? お嬢さん」  そして、その身なりの良さそうな人は、にっこり笑って私に手を出したしました。  こっ、これはもしかして。  天が味方をしてくれたんでしょうかっ?
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