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3日後に
警備会社の名前は大垣警備事務所となっていて社長の大垣は警備会社では有名な存在であった。各地に指導に行くのだ。
その指導かある程度警備員として認められると頼まれる。今回で2回目だった。
仙台市に去年。
かなり嫌になる。
「岩田、是非頼みたいな」
ニコニコと仙台市から帰った俺に社長は嬉しそうだった。
郡山市。しかも冬に指導を?
嫌になる。
昨日の社長からの電話が残念しかない。
30歳の俺は白田ひかり23歳に片思いの状況に郡山市行きが決定した昨日。
23歳の眼鏡をかけてる可愛い女性が俺についてくるのも決まった。東珠乃は俺は可愛いと思っている。
手を出してしまいそうだ。
警備会社で東珠乃を目の前に思う。
あぁ、可愛い。
「社長から命令なの?」
俺は東珠乃に聞いた。
「違います。郡山市に指導に行く岩田さんの手伝いとして募集がされたので、岩田さんと行きたいので」
東珠乃は嬉しい事を言った。
でももしかして両思い?という馬鹿な思いが湧く。
「よろしくね、東さん」
「はい」
郡山市に指導は3日後。
東珠乃がついてくるのなら楽しみだ。
山形の冬の夜。
仕事を終えて俺は七日町にきた。
新築西通りに俺の住むマンションがあるから便利な七日町であった。
映画館はあるし飯だってある。
コンビニもある。
七日町のタリーズで煙草を吸いながら珈琲をたしなんでいた。
東珠乃との3日後の郡山市が楽しみだが仕事だ、手を出してはいけない。
しかし、郡山市に指導が必要なのか。
郡山市は警備としての評価は高い筈だ。
山形が東北一番で警備の評価が残念ながら最下位。他県から山形に来ることになると言われるのが「山形は警備は最低だぞ、警備もどきがいる、警備の意識がないくせに真似事を平然としている山形だ」というのが言われる。そして残念ながら事実である。
そんな山形の唯一の警備意識の高い俺たちが、郡山市に行く?
郡山市が警備として低くなってしまったのだろうか?
灰皿に煙草の灰を棄てる。
煙草を咥えて吸う。
社長は不思議に思わないのか。
煙が宙を舞う。
俺と東珠乃は3日後まで休みだ。
もちろん3日間、準備するなり、何をしても自由である。
東珠乃は仕事が終わるといなくなっていたが準備はわかるだろう。
俺は会社を出た。そして何だか虚しくてタリーズコーヒーに立ち寄り珈琲と煙草でのんびりしていたというわけだが。
虚しさは広がった。
窓の外は雪が舞っていた。
白く冷たい雪が山形を染めていく。
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