ワタシ

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 恵里香の前には巨大な鏡が置かれていた。しかしそこには恵里香の姿はなかった。正確に言えばかつての美しい恵里香の姿は映っていなかった。そこに居るのは醜く太った見たこともない女だった。  かつてのモデル顔負けのプロポーションは見る影も無く。醜くたるんだ脂肪が付き、肌はシミで汚れ、髪は痛んでボサボサだった。整った顔も何処かへ消えてシミそばかすがまるで斑点の様に顔中に散らばり、吹き出物であふれていた。 「イヤァアアアアアア!」  彼女は近くにあった椅子で鏡を叩き割った。しかし現実は何も変わらない。どれだけ目をこすってみても世界中の男達を虜にしてきた美しい身体は何処にも無かった。そこにあるのはただの汚い脂肪の塊だった。彼女は泣き続けた。  暫くして彼女はゆっくりと立ち上がると。全身についた脂肪をぶらぶらと揺らしならが壁に一つだけあるドアに向かった。
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