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恵里香は家に向かってトボトボと歩き出した。すれ違う人が皆自分を見ている様な気がする。しかもそれは今までの羨望の眼差しではない。明らかに蔑んだ目だ。
「おい、見たか今のきったねぇ女」
「馬鹿、聞こえたらどうすんだよ」
本当にそう言ったかどうかは分からない。だが恵里香にはそう聞こえた。恵里香は男の声と現実から逃げ出す様に走り出した。ところが以前のしなやかな身体と違い、脂肪だらけの身体は思うように動かず、脚がもつれ転んでしまった。
通りすがりの男が助けてくれた。しかし彼の顔からは嫌々助けているという気持ちがまざまざと伝わって来た。恵里香は男の手を振りほどきまた走りだした。
嫌。嫌。こんなのワタシじゃない。ワタシが転んだら周り中の男がみんなワタシと仲良くなりたくて我先に駆け寄って来る。そして優しい言葉をかけてくれる。それがワタシ。
恵里香はノタノタと醜い身体を引きずって家に向かった。しかし家の近くまで来た所で足が止まり、どうしてもそれ以上先に進めなかった。
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