ワタシ

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 ある夜。恵里香は遅くまで自分のオフィスに残って仕事を片付けていた。その帰りだった。中学生くらいの男の子が駆け寄ってきて恵里香に言った。 「ごめんなさい、お姉さん。友達の女の子が怪我しちゃって動けないんです。助けて下さい」  恵里香が男の子について行くと公園の藪の中で女の子がうずくまって泣いていた。恵里香が女の子に声をかけようとした時だった。  バチッ  痛みを感じたかと思った次の瞬間には気を失っていた。男の子が改造されたスタンガンを恵里香に押し当てたのだ。 「おじさん、これでいいんだろ」 「ああ、ありがとう。助かったよ。ホラ、お礼の二十万だ。これを持ってさっさと帰るんだ。このことは誰にも言うんじゃないよ」 「オッケー、オッケー。じゃあね」  藪の中から現れた正樹がお金を渡すと、男の子と泣いているフリをしていた女の子は走って行った。「まぁ、誰かに言ったとしても関係無いがね。この顔で居るのは今日限りだ。フッフッフッ。さて、とうとう、とうとう手に入れたぞ。ああ、恵里香、恵里香、俺の美しい恵里香」  正樹は力なく横たわった恵里香を抱き抱えると藪の中に消えた。
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