【4-2】

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「し、かわ、くん………」  こんな時だというのに微笑んでしまう。 「救急車!!早く!こっちです!こっち!」  血相を変えた両親がふらつく足で私のそばに駆け寄る。  救急隊員が近づくが、腰の損傷を見て息を呑む。  視界はもう何も見えなかった。  闇の中煌めくのは先ほど焼き付いたステンドグラスの虹色。  頭蓋骨を割るような頭痛と共に揺れて私を苦しめる。  闇か、光か。  どちらかの道を今、選べと言うのなら。  彼を愛してしまった。  それが悪だと言われたくない。  出来るなら彼のそばにいたい。  彼を、悪魔を、私だけは、抱きしめることを諦めたくはないの。  もし手が届くなら、あなたをここまで引き上げて抱きしめたい。  もし声が届くなら、あなたにこの心を伝えたいの。  暗黒に淀み、霞む世界に落ちながら祈る。  ステンドグラスの残光がキラキラと頭上で舞う。    光が揺れている。  ・・・・・・?違う。あれは蝶か。  ひらひらと舞う、誘うように。  離れていく光。  離れていく天界。  その翅が光を散らして消していく。  ああ、なんて綺麗な……。  ん?違うな……あれは蝶じゃない。  蝶は、闇の中を翔ばないのだから。  そうか、ふふ。そうか………。  神様。私を自由にして下さい。私を柵から出したまま、追わずに放って置いて下さい。  神様、愛しています。  神様。あなたと同じように、彼を、闇を、愛しています。                                                                〈了〉
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