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家族
考えるのを今はやめよう。
僕は大きく首を振る。
医師が見つけてくれなければ、僕はここにはいなかった。
僕は今度こそ生きなければならないんだ。
手紙の願いを叶えなければいけないんだ。
何度も何度も読み返した。
僕の支え。僕のたからもの。
「差し支えなければ、もう一度私にも読ませてもらえないかな」
鳶色医師は、同じ時間に僕を診に来ては、少しだけ話をして戻っていく。
「写真の裏に書かれている誕生日だと、私は君より二回りも年上だな」
彼は、いつもそれが自分のたからものであるかのように、とても大切に扱ってくれた。
僕は少しだけ、身体から手紙を離せるようになっていった。
テーブルの上とか枕の傍だとか、まだまだ手を伸ばせる範囲だったけれど。
船には医師の彼の他に、いつも世話をしてくれる女性型看護師ロボットと、整備士も兼ねた男性型操縦士ロボットが乗っているだけだった。
彼女は、僕が笑うと同じように口の両端を上げようとする。
「このくらいデショウカ」
「うん! いいと思う」
「モウスコシ」
ガシャン!
「あ」
僕は鳶色医師と操縦士さん、どちらを呼んだらいいのか迷ってしまった。
「あの、看護師さんの顎が‥‥‥」
「う~ん、こりゃあ整備士の仕事だな」
鳶色医師は頭をかいた。
「スミ、マ、セン、私ガ、悪い‥‥‥ノデス」
「マッタク君はオロカダナー」
「ダマリ、ナサイ、バカ」
「どうかしたかい?」
「いえ‥‥‥」
鳶色医師が笑っていたのだ。
その笑顔は、写真のあの人達と少しだけ似ているような気がした。
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