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決断
「うん。でね? そろそろ、いや、明日処分してくれないかな」
「え‥‥‥」
「当然だろう? 君のやや過剰とも言える綿密なデータは見せてもらった。
その上で特に珍しい点も無い、我々現代人のごく普通の推定年齢14歳だと判明したんだ。無駄な研究費を使う前にと上層部から指示が出ているんだよ」
「だったらなぜ復元したんです! 彼はもう、人として生きているんですよ!?」
「声を落としてくれ」
所長はドアの辺りをちらちらと確認する。
「言わば研究者としての飽くなき探求心と言うものだ。
存在しない太古の星の人間を、少量の髪の毛から「復元」する。
試してみたくないスペシャリストがいるかね? 君だって、
医者としてそれほど命を説きたいのならば、なぜ引き受ける前に断らなかった?」
「ですから、彼のことは私が引き続き」
「ドクター」
「何です!?」
「君が実験体を引き受けると言った時、けっして我々に不安が無いわけではなかった。が、君の能力と置かれていた状況を考慮すれば、やはり君が適任だと考えて任せることにしたんだよ。だがな」
所長は鳶色医師の肩を掴み、ぐいぐいと揺さぶった。
「いいかね? 君が偶然拾ったあれは、ただのパーツだった。もともと人ですらなかった研究材料だ。さっさと廃棄しろ!」
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