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焦る姫花の指先を、唯がきゅっと優しく握り締める。
2人の手の中に、唯が嵌めるはずだった指輪が収まった。
「……唯。手、離してくれないと付けられないよ」
姫花が恐る恐る唯の顔を見上げ、
「付けやすいように俺が指先広げてても、上手く付けられなかったじゃん」
唯が少し困ったような顔ではにかむ。
「俺といる時は緊張しないで欲しいのにな」
そう言って、姫花の指を親指で優しく撫で回す唯の背後で、
「……コホン」
2人の甘いやり取りに居た堪れなくなった店員が咳払いを1つした。
「あっ、すみません」
2人の世界からやっと現実世界に戻ってきた唯が、姫花の手を引いたまま、慌てて店を出る。
結局、唯の指輪はその後で唯自身が自分できちんと嵌めた。
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