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「分かんない……けど、いつかは絶対に通る道だし」
以前の姫花なら、キスですらも怖いと言って逃げていたのに。
あの頃と比べると、今は随分と唯に惚れ込んでいるらしいことが分かる。
「ねぇ、梅ちゃん」
姫花が緊張で強ばった顔をしながら、小声で梅本を呼んだ。
自分の目の前のカップとポットを端によけて、テーブルの上に身を乗り出すようにして梅本に顔を近付ける。
姫花の美しすぎる顔が目の前に急接近してきて、同性であるはずの梅本も思わずドキッとした程。
「最初は痛いっていうのはよく聞くんだけど……その後は?」
これ以上にないくらいの真剣な表情で訊ねられ、
「え?」
梅本は固まった。
「2回目からはもう平気になるの?」
真剣な顔をしたままの姫花は、構わず質問を重ねる。
「それとも、1回目の途中から良くなってくるものなの?」
なかなかストレートな質問をお見舞いしてくれるが、必死になりすぎている姫花は、自分がとんでもない質問をしている自覚がない。
「ちょっと……姫ちゃん、一旦落ち着こう」
梅本はそう言いながら、自分のアイスコーヒーをごくごくと飲んだ。
動揺しているのは、梅本の方だった。
だって、
(――イイと思ったことなんて、一度もないもん)
今まで何度も彼氏に抱かれているが、痛いばかりで何がいいのか分からないから。
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