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「童貞だと何か悪いのかよ」
「おおぅ……否定しないどころか開き直ってる」
頼斗はコントローラーを床に置いて、驚きで目を見開きながら唯を振り返った。
テーブルの前に胡座をかいて座っている唯は、不機嫌そうに眉間に皺を寄せて頼斗を睨んでいる。
「いい悪いじゃなくてさ。初めて同士は悲惨だって言うじゃん」
怖い顔で睨まれていても全く怯まない頼斗が、唯の顔を真っ直ぐに見た。
「主に女の子側が痛すぎて可哀想って」
「……」
それは、唯も聞いたことがある。
姫花を泣かせてしまうのは、
「嫌だな……」
ぽつりと呟いた独り言に、
「じゃあ姫花なんかやめて、経験豊富な女と付き合えばいいじゃん」
呟かれた部分の言葉だけを拾った頼斗が、そんなことを言い出した。
「なんでそうなるんだ」
唯はますますムッとする。
「相談するヤツ間違えた」
頭を抱えて溜息をついた唯に、
「わざわざ俺に言うってことは、唯だって少なからず期待してるんだろ?」
頼斗はニヤニヤと意地悪く笑う。
「……」
唯は何も言い返さず、ただ無言で頼斗を睨みつけた。
……が、それもほんの数秒間だけで。
「……なるべく相手が痛がらないやり方って知ってる?」
そう訊ねた唯の顔は、頼斗が今までに見たこともない程に真剣そのもので、
「え……」
気圧された頼斗の顔から意地悪げな笑みがスッと消えた。
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