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そしてその時はやってきた
夏休み最後の2日間を使って、姫花と唯は前から約束をしていたテーマパークへと遊びに来ていた。
世間の学生たちは夏休みの宿題に追われているのか、まだ夏休み期間中だというのに、心なしか混雑具合はマシなように思えた。
絶叫系が大好きな姫花とは違い、苦手な唯は、
「ちょっ……ごめん。休ませて」
コースターを降りた後、青ざめた顔でベンチに腰を下ろした。
「シングルライダーなら待ち時間も短いし、少し待っててくれたら私1人で乗ったのに」
姫花はコースターの順番待ちをしている間中、唯を心配してずっとそう言っていたのに。
唯は頑として姫花の隣から離れなかった。
理由は聞くまでもなく、
(姫花が1人でシングルライダーの列に並んだりしたら、ナンパされまくるに決まってる)
そういうことなのだが、自分の容姿の美しさに自覚のない姫花にはそんなことを説明しても無駄なので、黙っておく。
「気持ち悪い?」
姫花が唯の背中を優しく摩る。
「うん……頭痛い」
乗り物酔いの薬は事前に飲んでおいたが、効いているのかいないのかよく分からない。
しっかりと地面に足をつけているはずなのに、まだ何だかフワフワとした感覚から抜け出せない。
「何か飲み物買ってくるから、ちょっと待ってて」
姫花が慌てて立ち上がろうとして、
「!」
その手を、唯が咄嗟に掴んで引き止める。
「俺から離れないでくれ」
「……え?」
唯の台詞に、姫花はわけが分からないながらも、頬を赤く染めた。
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