そしてその時はやってきた

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姫花は気が付いていないだろうが、どのアトラクションに並ぶにも、必ず後ろについてきている男2人組がいるのだ。 今も、姫花たちから少し離れたベンチで座って、ずっとこちらを凝視している。 ――付き合いたてのカップルがテーマパークデートをすると、別れる原因となる。 そういうジンクスがあるのは唯も聞いたことがあったし、すれ違うカップルが人混みや行列に苛立って喧嘩をしているのも、今日だけでも何組も見かけている。 彼氏と喧嘩して泣きながら別行動をしている彼女に、男数人のグループが声をかけているのも見た。 唯の予想でしかないが、ずっと後ろをついてきている男性2人組も、唯と姫花の喧嘩別れ待ちなのではないかと思えた。 絶対に、何がなんでも姫花と離れるわけにはいかなかった。 「唯……そこの自販機で飲み物買ってくるだけだから」 けれど、何も知らない姫花は、唯の手を振り払おうとする。 「要らないから、俺から離れないで」 姫花の手首を握る手に、唯が力を込めた。 「でも唯、本当に顔色悪いから」 姫花の方もムキになってきて、何とかして唯の手から逃げようとする。 そんな攻防戦を繰り広げていると、 「あっれぇ? 喧嘩かな?」 いつの間にか近くまで歩み寄って来ていた男2人組が、ニヤニヤと嬉しそうに笑いながら姫花の背後に立った。
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