116人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
「え……どうすんの?」
ヤツらは一旦見逃すとかなり面倒くさい。
下手をすると、見つからない可能性もある。
「一緒にいて、唯ぃ。一人にしないで」
「……」
それって、つまり――
「泊まって行って……お願い」
「……」
必死な姫花には悪いが、唯は思わず生唾を飲み込んだ。
「いや、でも……親御さんがいない時に勝手にっていうのは……」
「誰もいない時こそ唯に一緒にいて欲しいのに」
唯の腕の中で小刻みに震えている姫花。
本当に、怖がっているようだ。
「……分かった。一旦、着替えとか取りに戻ってもいい?」
「やだ! 置いていかないで!」
姫花が唯から全く離れてくれないので、唯は仕方なく姫花を連れたまま、一旦自宅に戻った。
その際、姫花の所で泊まると父に伝えると、
「それはいいが……桐生先生のお嬢さんに、変なことするなよ」
するわけないだろ! と言い返したいところではあったが、着替えや勉強道具を入れたトートバッグの中に、密かにゴムの箱も一緒に入れたので、
「……っ」
唯は一瞬言葉に詰まった。
だが、酔っている父はそんな唯の様子に気付かなかったのが、救いであった。
最初のコメントを投稿しよう!