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そして迎えた、姫花の誕生日当日。
唯は、姫花のマンションの正面玄関がよく見える場所で、姫花が出てくるのをこっそりと待っていた。
絶世の美少女と呼ばれている姫花が1人で街に出かけるなんて、絶対にロクなことにならないと分かっているから。
だから姫花の後をこっそりとつけて、何かあればすぐに助けに行ける準備をしておこうと思ったのだ。
何も知らない姫花が、機嫌良さげな表情で玄関から出てきた。
この日のためにわざわざ用意したのだろうか。
白地に細かいブルーの花柄のワンピースを纏った姫花は、いつにも増して可愛く見えて。
そして、いつにも増して目立ってしまっていた。
(これは……嫌な予感がするぞ)
唯は、姫花に気付かれないように一定の距離を保ちながら、姫花の後をついていった。
唯が一番危惧していた、電車内での痴漢被害には、なんとか遭わずに済んで。
電車を降りて駅を出て、さぁ映画館に向かって歩くぞ、というところで――
「キミ、めちゃくちゃ可愛いね! いくつ? どこの子?」
姫花がナンパ男に捕まってしまった。
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