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「……」
ナンパされるなんて日常茶飯事な姫花は、慣れた様子で無視を決め込み、歩き始めた。
「ねっ。彼氏いんの?」
「います」
その質問にだけはしっかりと答えていて、
「……っ」
こっそりとそれを聞いていた唯の胸をズキュンと射抜いた。
「これからデート?」
「……」
「キミみたいな可愛い子を1人で出歩かせるなんて、不用心な彼氏だねぇ。そんなのが相手でいいの?」
男の言葉に、
(お前みたいなのがいて心配だから、俺がこうして姫花のストーカー紛いなことしてるんだろうが!!)
唯は叫びたくなったが、それを必死で我慢する。
「ねぇ。彼氏なんかほっといてさ。俺と一緒に遊ぼうよ」
ついに、男が姫花の手首を掴んだ。
「離してよ!」
「いいじゃん。俺の連れも、可愛い子来るの待ってるからさぁ」
「何の話よ!?」
どうやらただのナンパではないようで、流石の姫花も焦り始めた。
と、そこへ
「姫花! ごめん。待った?」
唯が笑顔で駆け寄ってきて――
「いでででで!」
姫花の腕を掴んでいた男の手首を、これでもかと捻り上げた。
その顔には、満面の笑みを浮かべたままで。
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