初めてのデート

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「唯!?」 唯を見つめる姫花の目は、驚きで大きく見開かれている。 その瞳の蒼い(きら)めきが強調されて、 (綺麗だな……) 唯は男の手を未だに思い切り捻り上げたまま、姫花に見惚(みと)れていた。 「ちょっ……ごめんなさい! 許して下さい! めちゃくちゃ痛いです!!」 唯のすぐ傍で、男が涙声で叫んだ。 「あ」 男の存在を完全に忘れていた唯が、ぱっとその手を離す。 「次、姫花に近付いたら、その腕根元から(ねじ)り切ってやるからな」 本気としか思えない唯の声と目つきに、 「ひっ……!」 男はもう声も出せなくなり、黙ったままペコペコと頭を下げて、逃げるように走り去った。 「……いつからつけてたの?」 姫花にじとっと睨まれ、 「マンションの前からずっと」 唯は悪びれもせずに答えた。 尾行してきて良かったと心から思っているから。 「待ち合わせにならないじゃん」 ムスッとむくれる姫花に、 「“待ち合わせに少し遅れてきた彼氏風”の台詞はちゃんと言ったぞ」 唯もムッとした。 本当は、姫花に会って一番にかけたかった言葉があったのに。 今言える空気でもないので、唯の中の計画が上手くいかず、内心ではかなり(いら)()っていた。
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