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姫花は、自分の左腕に巻いた腕時計を確認して――
「あ! 映画……」
ナンパの対応に追われている間に結構な時間が過ぎたらしく、今から映画館まで走ったとしてももう間に合わない。
次の回にしたいが、ケーキ屋の席も時間を指定して予約しているので、そんな時間はない。
悲しそうに俯く姫花を見た唯は、
「まだ公開されたばっかなんだろ?」
姫花の肩を優しく抱いた。
「次のデートの時に一緒に観よう」
そう言って、優しく微笑んだ。
しかし、姫花は悲しそうな目をしたまま首を横に振る。
「……早く観ないと、頼斗が」
突然出てきた姫花の双子の弟の名前。
「アイツが私より先に観たら、絶対ネタばらししてくるから嫌なの」
「あー……」
それは唯も何度もされたことがあるので、頷くしかなかった。
「何とか時間調節して観に行こうか」
折角の姫花の誕生日。
何とかして叶えてやりたくて、唯はスマホで今日の上映スケジュールをもう一度確認した。
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