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新たな人生のスタート
欄干に立ち、海を背にした、僕は、
「華奈、待っててね。今行くからね。」
目を瞑り後ろへ倒れた。
その時、微かに華奈の声と同時に僕の指に何かが触れた。
今まさに橋の下に落下していく、僕は橋の上に居る華奈を見た。
えっ、どうして?
華奈なの?
せっかく会えたのに、僕は橋の下へ、華奈は橋の上に居て、また引き裂かれるような気になった。
そんな僕を見て、華奈はとても悲しそうな表情を浮かべていた。
程なくして、僕は意識を失い真っ暗な場所にいた。
あれっ?此処は何処なんだ?
目が慣れてきたのか段々と風景が見えてくる。
とても普通では考えられない程、真っ暗な場所だけど、さっきいた橋の上に居るようだった。
そのうち、少し離れた場所から華奈が現れた。
小さな豆電球で照らされているくらいの明るさで、やっと認識出来る程度だった。
華奈の顔は、やっぱり悲しそうにしている。
僕は華奈の所に駆け寄ろうとしたが、不思議と、ある一定の場所からは何故か進めなかった。
僕は、焦って一生懸命、華奈に近寄ろうとしていると華奈が話始めた。
「直哉、どうしてこんな事したの?」
「だって、僕は華奈が居ないと生きて行けないからだよ。華奈、どうして死んでしまったの?」
「私、病気になってしまったの。婚約した後に病気が見つかって余命宣告されて、頑張って病気と戦ったけど無理だった、、、病気の事、打ち明けられずに、ごめんね。直哉を1人残してしまって、ごめんね。悲しい思いをさせてしまって、ごめんね。」
「でも、もういいんだ。こうして、また会えたんだから、これからは、ずっと一緒に居ようね。」
「直哉、それは出来ないよ。」
「えっ?どうして?!」
「自分で命を絶ってしまったら、私と同じ場所には来れないのよ。寿命が来るまで人生を生き抜いたら、その後に再開できるの。だから、直哉も一生懸命に生きて欲しい。」
「そうだったんだ。ちゃんと生きなきゃ駄目だったんだな。でも僕は橋から飛び降りてしまったし、もう死んでしまったから遅いんだよな。華奈、ごめんね。」
「まだ直哉は死んでない。これからまたやり直せる。だから私の為に生き抜いて。私は、いつも直哉の傍で見守っているからね。」
気が付くと僕は橋の上で横になっていた。
時計を見ると1時間程経っていた。
あれは何だったのか、不思議だけど、華奈が助けてくれたんだ。
僕は生きていかなければならない。
何故なら、また華奈と会えなくなってしまうから、僕は辛くても、華奈とまた再開出来る事を夢みて、生きていく。
僕は、その足で華奈の家に向かった。
華奈のご両親が仏壇の前へ案内してくれた。
僕は仏壇にお線香をしてお祈りが終わると、先程あった出来事を話した。
僕の目からまた涙が溢れ出た。
華奈のご両親も一緒に涙を流してくれた。
すると、華奈の母が仏壇から何かを出して僕に渡した。
僕が来たら渡して欲しいと預かっていた、華奈が書いた手紙を渡された。
そこには、僕に一生懸命、生きて欲しいと書かれていた。
そして、いつも僕の傍で見守っていると、、
彼女が朝言ってた事がまた手紙にも書いてあった。
仏壇の華奈の写真を見ながら心の中で話をした。
華奈、君からの思いは、ちゃんと届いたよ。ちゃんと伝わったよ。またいつか華奈と会えるまで僕はちゃんと生き抜くからね。
そこにある写真の中の華奈が笑った様に見えた。
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