首都壊滅への序章

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東京国国防総省、宇宙軍中央作戦基地方舟。 失われゆく尊い命の陰影を、君たちはどう感じているか? 戦闘指揮所内の加瀬は、運命を共にする若者たち、方舟という安全地帯で任務に就く隊員達と、いつかは議論しなくてはならない重大な問題をに考えていた。方舟に従事する隊員は、スカイブルーの軍服に身を包み、それはあたかも、聡明に広がる平和の空を司る選ばれし者達、特別な軍人を意味していた。 高学歴で頭脳明晰、従順で思想家では無い若者達を見て、妄想狂の理想世界の色がスカイブルーだと、加瀬は嫌味な顔で辺りを見回した。 最前線では不適合な、お洒落でカッコイイお洋服。 頭に浮かぶ一語一語を不快に思いながら。 「君は、この任務に誇りを持てるかい?」 と、モニターに映るセレモニーを眺めている、りんね管理科、畑に優しい口調で尋ねた。 「まだ・・・わかりません」 彼女はさらっと答えた。 加瀬は、畑が身分相応で、地に足がついている人間。 要するに、まともな人間だと思っていた。 それは、日本国際テレビ局を標的とした、超エネルギー銀河宇宙線G線照射攻撃の際にも感じていた。 人口統計数を報告する畑の指先が、一瞬止まったのだ。 数分で消える生命の数を見て、躊躇したのだろう。声も震えていた。 加瀬は、畑の頭をクシャっと掴んでその場を離れた。 自分の子供と歳の変わらない兵士達。 死ぬなよと言ってやりたかった。 モニターに映る槙野恵子は、イザナミとして海魂上埜樹流亞に降臨した。 それこそが東京国なのだ。 ヒトは自惚れる。 空をあざ笑い、地を腐らせ、時には生命も貪る。 この世の悪はヒトなのだ。 では、何故そこに生命が宿っているのだろう。 生命自浄作用の発見が、全ての答えだと加瀬は想像した。 ヒトは万能ではない。 進化しながら後退し続ける存在なのだ。 欲望に歯止めが利かなくなった時、ヒトはは絶滅する仕組みになっている。 ともすれば、破滅の危機に瀕しているにも関わらず、絶滅するのがヒトかもしれない。 加瀬は、モニターから流れ出る声に耳を傾けながら、時代に身を任せる愚行に打ち勝とうと必死に思考を張り巡らせた。 摂津志の声が聞こえる。 途切れ途切れではあるが、しっかりとした迷いのない声だ。 「東京国防衛軍海兵隊! 前へ!」 秋葉原駅高架上、61式戦車を背景に、純白の軍服を着た12名の兵士達が紺瑠璃色のライフルを天に掲げた。 戦車砲塔に立つ恵子が叫んだ。 「わたしたちは愚かなのか? その審判はいずれ歴史が証明するでしょう。イザナミは降臨した。わたしに宿り、皆を導くために降臨した。そしてこの、美しい銃はイザナギと名付けましょう! 海魂上埜樹流亞へと誘うキルア! それがイザナギであり、東京国の証なのです!」 人々の歓声が、スピーカーを振動させた。 方舟は、異様な静寂に包まれていた。
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