ペンローズの階段は、どこまでも

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「ほんまや。じゃあ、ウチらは3階の時間に閉じ込められたんか」  光希は焦る由貴をなだめる。 「落ち着いて。階段は、北側にもあるし、渡り廊下を渡った2号棟にも階段はあるから、そこを確かめてみよう」 「ほな、手分けしてみるか?」 「いや。二人一緒。もし別々に階段を降りて、バラバラになったら一人はここに取り残されてしまうかも知れないからね」 「そやな。ホラー映画でも単独行動は死亡フラグやった。効率悪うても一緒がええねんな」  由貴は強気にする。  それから二人は1号棟の北側の階段を確かめ、次に2号棟の北側の南側の階段を降りて1階まで降りれるかを検証しようとしたが、2号棟へ行く渡り廊下は施錠されており確かめることはできなかった。  現状として、二人が居る1号棟の南北にある2つの階段は3階まで堂々巡りをするだけだった。 「どうしたらええんや」  由貴は不安な面持ちで光希を見ると、光希は考えて結論を出す。 「よし。勉強しよう」 「何言うてんねん」  予想もしない光希の答えに、由貴は驚く。 「こんな現象が永遠に続くとは思えない。台風が通過すれば暴風雨が止むように時間が経てば、この現象が収まる可能性がある。窓から雨樋パイプを伝って降りれば、もしかしたら出られるかも知れないけど、結果は同じ可能性が高いし、上から戻って来たらケガをする可能性もある」 「無理にあがいても危ないだけか。光希が云うた、トリアノンの幽霊事件なら18世紀に行った二人も戻ってこれとるからな」 「それに由貴。これは、チャンスだよ。僕たちは奇妙な時間の中に居るんだ」  光希の言葉に由貴は気づく。 「そっか。階段を降りたら時間が戻っとったな。ここで勉強して何時間経っても現実では時間が経ってへんちゅうことか」 「あくまでも予測だけどね。じゃあ、教室で勉強しようか」  二人は自分たちの教室に戻ると、自習を始めた。  由貴は授業で習った数学の出題を最初から始める。回答を導き出し解き方を確立させる。
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