ペンローズの階段は、どこまでも

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 互いに名前で呼び合っていたが、彼氏彼女の関係ではない。中学一年の時に同じクラスの班割りが切っ掛けで知り合い、学年が進んだ二年生になっても関係は切れず、由貴の性格から男友達のように、いつの間にか名前で呼び合っていた。  学友であるが、光希から見れば若干悪友に入っている気もした。 「なあ光希、勉強教えさせたる」  由貴の日本語の使い方に光希は違和感を覚える。関西弁が入っているからかと、額に指を当てて考える。 「え? 何」 「鈍いやっちゃな。ウチの先生をさせたるって言うとるんや」  呆れ顔で由貴は理解させる。 「それって、数学のテストのこと」 「せや」  由貴は胸を張って答えた。 「いや。そんなこと言われてもさ。テストがいつか知っているだろ」 「明日」  真顔で言う由貴に、光希も真顔で答える。 「……無理」 「せやから言うとるんやろが。ウチが昨日までカゼで休んどったやろ。これ見てみ」  由貴は答案用紙を三枚取り出して光希に持たせる。光希の中学は週に一度学力向上を目的にテストが行われていた。生徒の理解力を細かく確認することで、学習の遅れを回避し授業のペースを調整。場合によっては放課後に補習を行っていた。 「英語83数学58国語85か。英語と国語は良いけど、数学は壊滅的だね」 「でも、女としてはええ数字やろ」  由貴は腕組みをし、得意気にした。 「何が?」 「スリーサイズ」  美樹は右手を頭の後ろに、左手を腰に当て胸を張って決めた。  セクシーポーズを。  光希は路傍の石を見るような眼で由貴を見、手にした答案用紙が折れて項垂れる。 「……何か言うてや。ウチがバカみたいやないか」  無反応の光希に、由貴は寂しげに噛み付いた。  光希は視線を逸らせて、相手にしたくない様子を見せる。
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