ペンローズの階段は、どこまでも

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「実際そうだし」  その言葉を由貴は見逃さない。指を向けて諭し始めた。 「認めたな光希! そんなウチを可哀想とは思わへんのか。次のテストでこんな点数取ったら親にも先生にも怒られるんや」 「……僕だって人に教える程、数学の成績は良い方じゃないよ」  光希は同情しつつも、少し考えて断った。 「だからや。先生ちゅうもんは、人を教えるために教わる人以上に努力せなあかんのや。ウチの勉強をみることによって、光希も勉強できる。ウチも成績向上。小遣いア……」  由貴は柄にもなく慎ましく口元を押さえる。 「今、小遣いアップって言いかけなかった?」  光希は由貴の顔を覗き込むように首を傾げジト目で見ると、由貴は視線を反らして話を逸らす。 「細かいこと気にしたらあかん。それより。な、助ける思うて引き受けてえな」  由貴は手を合わせて拝み始めた。  平身低頭で頼まれると、光希は嫌とは言えなかった。 「分かった。週一テストはいつも基礎的な内容だし、僕も勉強させてもらうよ」  光希は、流されるままに応じることにした。  そのまま教室に残ることにした二人は、まずは前回のテストからの復習を行い理解した上で、次のテスト範囲に取り掛かる。  16時頃から始め、たっぷり2時間をかけて由貴に勉強を教えていった。 「こんな所かな。テストは復習を兼ねて前回の問題も出るから6~7割りは簡単な筈だよ」 「悪いな光希。数日分の遅れを一気に取り戻せたみたいや」  由貴は礼を言い、二人は学校を後にした。  夕闇が迫る時を光希は帰宅し、間もなく家に着こうとしていると携帯電話が鳴った。二つ折りのガラケーだが、光希は通話とメールしか使用しないので不便に思うことはない。  見ると由貴からだった。  電話に出た光希に由貴は唐突に訊く。 「光希。あんたウチの教科書持って帰ってへん? 家に帰って鞄見たら教科書が無いんや」
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