ペンローズの階段は、どこまでも

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「ウチを、そんじょそこらの女といっしょにせんといて」  階段をヒョイヒョイと降り、残り三段になったところでプリーツスカートを広げて踊り場に飛んで降りた。 「早うし」  由貴は階段下から促した。光希は由貴の元気さに気苦労した面持ちで階段を降りる。  不意に光希は目眩に似た浮遊感を感じ、手すりを掴む。片目で由貴を見ると由貴も壁に手を当ててバランスを保っているように見えた。 「地震?」 「何や光希。変な感じがしたな」  由貴は周囲を見回し、光希は階段を降りた。 「何か嫌な感じがする。早く帰ろう」  今度は光希が由貴を促す。  1階分を降り、2階分の階段を降りた所で、光希は異様なことに気がついた。  3階から2階分の階段を降り、1階に着いた筈であるにも関わらず折返しを見ると階段が濃く暗い空間に続いていたのだ。  そのことは由貴も気がつき、光希の方を向いて訊く。 「……光希。ウチら2階分降りたよな。何で階段があるんや」  光希が階段近くの教室札にライトを向けると、2-5とあった。その事実に由貴は青ざめる。 「何でや。何で二年生のクラスがある3階に居るんや」  現実に由貴が混乱した様子をみせていると、光希は言った。 「学校の怪談」 「当たり前やろ。そのまんま学校の階段や」  由貴は階段を指し示すのに対し、光希は本当に伝えたいことを言う。 「由貴が言っているのは1階、2階の階に段数の段だろ。僕が言っているのは、怖さや怪しさを感じさせる話の怪談。  学校の怪談というのは、学校やその周辺を舞台にして、子供たちよって語られる怪談のことだよ」  言われて由貴は理解した。 「あれか。トイレの花子さんとか、赤い紙・青い紙とか言うやつやろ」  由貴は小学生の頃にあった話を思い出した。そういった類の話をしては怖いながらも面白がったものだ。
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